「これぞ本家だ、北欧版地塗れハムレット!! 復讐に彩られた亡国の王子の人生の咆哮と魔女の微笑...これぞ本当の貴種流離譚映画」ノースマン 導かれし復讐者 O次郎(平日はサラリーマン、休日はアマチュア劇団員)さんの映画レビュー(感想・評価)
これぞ本家だ、北欧版地塗れハムレット!! 復讐に彩られた亡国の王子の人生の咆哮と魔女の微笑...これぞ本当の貴種流離譚映画
噂に違わぬ骨太で血みどろな北欧神話譚!
"父王を叔父君に誅殺され母を奪われた王子が漂流の末に復讐を果たす"というまさしく『ハムレット』的な貴種流離譚がその本筋なのですが、そのモデルとされるスカンディナヴィアの伝説上の人物アムレートを主人公に、より物語の出自に沿った北欧神話的な純然たる暴力と峻厳な自然を背景としたダークファンタジーに仕上がっており、『ハムレット』の抒情たっぷりで"女々しい(誤解を恐れずに言えば)"部分を排した徹頭徹尾猛々しい復讐の物語にリビルドされています。
『ハムレット』はどうにも甘ったるくて…と感じている方々、幼少期に慣れ親しんだ『小さなバイキング ビッケ』から転じてバイキングの勇躍に惹かれる、そしてシュワちゃんの『コナン・ザ・グレート』やジェイソン・モモアの『コナン・ザ・バーバリアン』の野性味に打たれた方々ぜひ、というところ。
同監督の過去二作品とも人心の醜悪さや超自然的な事象に対する得体の知れない恐怖を鬻ぐ展開が高く評価されており、本作でもその手法は踏襲されつつもさらにアクション(それも多分にバイオレンスな)にロマンスという娯楽要素が加わり、製作者として一気にマジョリティーを獲得した感があります。
史実を背景としたリアリティーとケレン味を利かせたオーバー表現との間のバランスにやや迷いは感じられましたが、今後の彼の監督作品については職人としてよりどちらかに振り切った趣向が企図されるかと思うと、本作でのこの混然一体とした独特の妙味はなかなかに貴重かもしれません。それがゆえにオフトーンにも荒唐無稽にもなり過ぎず、独自の空気感が漲っているように思いました。