「人間の本性を曝け出すドラマ」ノースマン 導かれし復讐者 Masatoshi Matsumotoさんの映画レビュー(感想・評価)
人間の本性を曝け出すドラマ
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ドラマの中で何度となく出てくる四つん這いになって、遠吠えする男たち。人間も、理性で着飾ってはいるけどそれを剥ぎ取ると、野獣、そしてストレートな感情。こういう人間の赤裸々な姿は、現代劇では描けない。
たとえば、ビルの谷間で男が長い髪を振り乱して、人に襲いかかるなんて、それはホラー映画でしかあり得ない。でも、どんなに着飾った人間にもそういう野生としての血はあるんだろうと思う。
ストーリー全体を覆うのは復讐。親を殺された憎しみ。それが人間を突き動かす。現代の殺人事件にしても、そういう野生的な側面が理性を抑え込んだとき起きる。しかし、大概のひとは、対人で嫌なことがあってもグッと堪える。だから、著名人が計画的に殺人を犯す刑事コロンボは、ちょっと嘘っぽい。
最後は相打ちで主人公も亡くなるが、邪悪な相手を倒して、かつ、なくなっていく。これは、悲劇か?とも思ったが、上映後のトークショーでハッピーエンドだったと聞いて、そうか、そういう見方か!と思った。愛した女性の中に子孫を残せたから。だから、最後は安らかな顔がスクリーンにあらわれたのだ。
勧善懲悪で、悪い奴をやっつける同じ北欧神話のマーベルのマイティソーもいいが、ノースマンの方が人間の本性をえぐるドラマになっていてよい。ソーの兄弟のロキは殺されても殺されても死なないわけで(笑
今回は東京国際映画祭でみたが、1月の公開で再度見てみたいと思った。
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