劇場公開日 2022年7月29日

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「鑑賞するなら体調の良いときに、を強くおすすめする一作」女神の継承 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0鑑賞するなら体調の良いときに、を強くおすすめする一作

2022年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

本作の紹介であれば、”あの『哭声/コクソン』(2016)の”と言わずにはいられない、ナ・ホンジンが原案とプロデュースを担当し、タイでは映画界だけでなく、声優などでも活躍しているバンジョン・ピサンタナクーンが監督を務めた本作。ドキュメンタリー番組の撮影隊が、民間伝承にまつわる奇妙な事件に遭遇し、やがて恐ろしい展開に…、という、いわゆる「モキュメンタリー」の形式(実際にはこうしたドラマの表現手法を指し示す幾つかの語があり、それぞれに明確な定義があるそうなんだけど、ここではひとまずこの語を使います)を採用したドラマとなっています。

ドキュメンタリーの素材として映していたはずの祈祷師やその家族の言動が、徐々に不可解さを増し、やがてカメラの向こう側とこちら側の境界線があいまいになっていく…、と、展開自体はそれほど真新しいものではなくとも、日常に根付いた祈祷師の存在などの興味深い要素が多く、また撮影班の目線に密着した映像の緊迫感もあって、退屈させません。時折差し挟まれるインタビュー映像は、まさにドキュメンタリー番組の形式をそのまま踏襲したもので、要するに作り込み感満載なのですが、日常で見慣れた映像的な形式、演出に触れると、そこに現実感を見出してしまうという観客側の奇妙な感覚(錯覚)を巧みに利用して、徐々に結末への地ならしをしていきます。

元々『哭声』のスピンオフとして企画されたというだけに、結末がどのような方向になるのかちょっと予想がつきそうなもんですが、それにしても想像を超えていました…。そして最終盤のあるインタビューの内容が更に絶望感を増しています。

モキュメンタリー形式の映像についてはちょっとおかしな部分がないこともなかったけど、全体的に恐怖描写を最大限に効果的なものにする演出が非常に見事で、完成度の高い作品です。ただし視覚的心理的にかなりこたえるものがあるので、鑑賞するのは心身ともに余裕のあるときがおすすめです!

yui