劇場公開日 2022年7月29日

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女神の継承 : インタビュー

2022年8月4日更新

祈祷師、憑りつかれた女性、恐怖の儀式…悪夢のような世界観に話題騒然! 監督&キャストに直撃インタビュー

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韓国の大ヒットオカルトホラー「哭声 コクソン」のナ・ホンジン原案、プロデュース、タイのバンジョン・ピサンタナクーン監督がメガホンをとった「女神の継承」が公開された。自然豊かなタイ東北部の小さな村の祈祷師と、何かに憑りつかれた若い女性が軸となった悪夢のような恐ろしい展開を、多くのホラーファンが「地獄のような鑑賞体験」「土着信仰の呪いが衝撃的」と絶賛している。このほど、日本公開を記念し、ピサンタナクーン監督と祈祷師ニムを演じたサワニー・ウトーンマ、何かに憑りつかれる女性ミンを演じたナリルヤ・グルモンコルペチが来日し、映画.comのインタビューに応じた。

<あらすじ>
 タイ東北部の村で脈々と受け継がれてきた祈祷師一族の血を継ぐミンは、原因不明の体調不良に見舞われ、まるで人格が変わったように凶暴な言動を繰り返すようになってしまう。途方に暮れた母は、祈祷師である妹のニムに助けを求める。ミンを救うため、ニムは祈祷をおこなうが、ミンにとり憑いていたのは想像をはるかに超えた強大な存在だった。

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――ドキュメンタリーのようなリアルさ、俳優陣の鬼気迫る演技に圧倒されました。タイの東北部などへ赴き、1年のリサーチをされたという話を事前に伺ったのですが、祈祷の儀式のシーンは、実際に行われているものを取り入れているのでしょうか?

ピサンタナクーン監督:もともと実際にある儀式の要素だけを取り入れて、あとは想像で補いました。例えば、生卵を使うシーンはイサーン地方で卵を体にあてて、悪い病気を取り除くという儀式が実際あり、そこから発展させました。

――元々は「哭声 コクソン」の続編として、祈祷師を軸にした話を作ってほしいということで企画がスタートしたそうですね。今作制作にあたり、ナ・ホンジン監督からリクエストやアドバイスはありましたか?

ピサンタナクーン監督:「哭声 コクソン」の世界をタイでローカライズし、自分で解釈してくださいと言われました。ナ監督が様々な方向性を示してくれ、例えば「すべてを明確にしなくてもよい」と言われました。「見た観客がわかる部分もあるし、わからない部分もあるし、それが観客同士の議論となり、映画の不明な部分を繋げてくれる」と仰ってくださったのが印象的です。

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――祈祷師のニム、心身に変調をきたすミンという難役を演じた、おふたりの存在感が圧倒的でした。キャスティングについて教えてください。

ピサンタナクーン監督:有名俳優は使わず、演技力だけで俳優を決めたいと最初から思っていました。オーディションは一般的なものでしたが、特にニム役はとても難しいキャラクターを演じてもらうので、舞台俳優を使いたいと考えました。実はサワニーさんは、前作「一日だけの恋人」(16/日本劇場未公開)で少しご一緒し、彼女に合いそうな役だと思い、オーディションを受けてもらったらピッタリだったのです。

ミン役探しは、かなり苦労しました。オーディションまでナルリヤさんの事は知らなかったのですが、オーディションテープを見て、自分が思い描いた女性だと思い決定しました。

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――サワニーさんに伺います。祈祷師のニムという特殊な役柄です。役作りについてお聞かせください。監督と同様に実際の祈祷師の方に会いに行くなどのリサーチも行われたのでしょうか?

サワニー・ウトーンマ:この映画の出演が決まる以前に、映画とは関係ない理由で実際の祈祷師に会う機会は一度ありました。そしてこの話が決まり、その後、YouTubeで祈祷師を検索したり、スタッフの方に参考動画を送ってもらったのですが、かなりオーバーな動きをされる方もいました。でも、いろいろと考えて、一番リアルに見えるのは、一見普通の村人のように見え、内面にパワーを秘めているというキャラクターなのではと考えました。

そして、祈祷師に対して少しずつ理解を深めて行きました。ワークショップでキャラクター作りをしていきましたが、監督は、“祈祷師はこうあるべき”という演技を決めませんでした。ですから、ニムを撮る監督が一番疲れたと思います。撮影中もあまりうまくいってないテイクがあったときは、何度もいろんなパターンで演じ直し、最終的には監督の期待に沿うような人物になったと思います。

――演じる上で、一番難しかったのはどのシーンですか?

サワニー・ウトーンマ:ラストシーンですね。でも一番好きです。事前にこういう設定でという指示は与えられていたので、いくつかの演技をしましたが、最終的に採用されたのが、私の即興でした。私の演技に音声さんも、監督も付き合ってくれ、みんなの気持ちが一致した瞬間で、私にとって初めての経験でした。

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――ナルリヤさんに伺います。ミンは一見どこにでもいそうな普通の女性から狂気のように変容し、肉体的にハードなシーンなどもあって、役作りや気持ちの切り替えなど、なかなか大変だったと思います。

ナリルヤ・グルモンコルペチ:ミンのキャラクター作りについては、監督と振付師パク・ジェインさんとたくさん話をしました。そして、リアルに演じるために結構何度もリハーサルをしました。監督たちの指示と自分の想像を付け加えた演技で、ミンが出来上がっていきました。特に、肉を食べる撮影の直前に、私が飼っている猫たちが消えたという連絡が家から来て、演じる前に心を落ち着けるのに時間がかかりました。

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――改めて監督に伺います。デビュー作の「心霊写真」からホラー作品で注目されていますが、とりわけ今回の作品ではどのような表現にこだわりましたか?

今回目標としたのは映画に特別な雰囲気を出すことでした。リアルを追求し、カメラの手が震えたり、ライトを使わないなどのフェイクドキュメンタリーの工夫ではなく、今回のモキュメンタリーでは最初はすごく美しく撮りながら、次第に怖くなっていき、後半は全く違う様相になる……そういった雰囲気作りに一番心血を注ぎました。

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――今回、お三方が日本に来てくださってとてもうれしく思います。日本の映画や文化でお好きな作品などがあれば教えてください。

ピサンタナクーン監督:是枝裕和監督の「ベイビー・ブローカー」はとても良かったですね。私は映画館で2回見ました。

サワニー・ウトーンマ:私は舞台出身で、野田秀樹さんの「赤鬼」というタイと日本の共同制作作品があり、公演時にプロダクションマネージャーとして以前日本を訪れました。とても複雑な物語ですが、時代性を感じる素晴らしいお話です。

ナリルヤ・グルモンコルペチ:和食が大好きで、特にお寿司が大好きなんです。映画と関係ないですね(笑)。今回は、美味しいウニが食べたいです。

女神の継承」は公開中。R18+指定。

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