「猫が狭い隙間に入って体を丸める様な安心感」ショーイング・アップ La Stradaさんの映画レビュー(感想・評価)
猫が狭い隙間に入って体を丸める様な安心感
年頭に観た『ファースト・カウ』の素晴らしさに大きな衝撃を受けたケリー・ライカート作品はあれが監督の最新作ではありませんでした。という事で、昨年のカンヌに出品された最新作がこれです。
芸術大学で教えながら自らも創作を続ける造形作家の、個展を控えた日常を描く物語。家の修理をしてくれない大家に苛立ったり、人格に問題はあっても優れた芸術的才能を持つ人物に嫉妬を感じたりの日々の小さな漣が綴られます。特に大きな出来事は起きないのですが、台詞で説明しない独特の間(ま)に自分の心と体がスッポリはまる一体感が心地よいのです。猫が狭い隙間に入って体を丸める様な安心感とでも言うべきかな。『ファースト・カウ』とはまた異なるケリー・ライカートの名人芸でしょう。観終えて時間が経ってからの方が滋味が滲み出て来るる不思議な味わいです。 (2024/1/13 鑑賞)
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