「厳しい現実」聖地には蜘蛛が巣を張る R41さんの映画レビュー(感想・評価)
厳しい現実
社会問題を取り上げたクライムサスペンス
実際にイランで起きた事件を元に作られた物語
あの「ボーダー」の監督の作品らしい作品だった。
しかしこの作品が問う人間の根源的な部分は、おいそれと答えは導き出せない。
特に最後にラヒミがバスの中で見ていた映像
サイードの息子の映像
あの世界観
さて、
正義とは何だろうか?
この正義なるものは国や文化の違い、そして戦時中か平和な世界家でも大きく違ってくる。
この背景にあるのが宗教だろう。
宗教という異常な思考
イエスやムハンマド、ブッダなど、そもそも宗教という概念など持っていなかったのだろう。
それを経典として文字にして、地獄を盾に人々から自由意志を奪い、人々を支配してきたのが宗教ではないのか?
戒律の厳しい宗教ほどその傾向が強く、そこにあるのは人ではなく神で、そもそも人のことなど二の次の癖に戒律を守らない人を弾圧する。
サイードは彼らの世界の象徴だ。
彼のしたことが正しいと認識し、それが世論となっている。
つまり、
この世界に正しいことなど何もないということもできる。
それはその宗教とか文化によって決められてしまうものだからだ。
正義とは、宗教や文化などの背景によって左右されるものなのだ。
ただし、
人は皆共感することができる。
この共感はいったいどこから来るのだろうか?
自分の経験 そして常日頃から考えていること 哲学的な問いやこの世の理
こうありたいと思う心
または他人の言動への反射 反感
この共感と反感があるのであれば、人は皆その全てを持っていることになる。
そこにあるのは「選択」だけなのかもしれない。
さて、、
物語の世界、2000年ごろのイラン
そして2003年3月20日 アメリカのジョージ・ブッシュ大統領は、「イラクが大量破壊兵器を保有している」との理由で、イギリスなどと共にイラクへの軍事攻撃(イラク戦争)を開始した。
この物語に隠されているこの史実
大量破壊兵器など何一つ出てこなかったことと、65万人のイラン人がアメリカ軍によって殺されている事実がある。
そして何食わぬ顔で生きている。
この部分があることで、この作品に描かれているイランという国を色眼鏡で見てしまう。
あの「君は行く先を知らない」の世界もまたイランだった。
戦争によって、アメリカによって変えられてしまった国だともいえる。
その結果、貧困が生じ、娼婦が登場したのではないのか?
娼婦が宗教上の問題という体で裁かれるよりも、その根幹となっている貧困層への取り組みこそ、聖職者なる者たちの仕事なのではないのか???
どこもかしこも腐っているのは間違いない。
しかし、
この作品は「現実」という枠としては非常に公平に作られているように見えるが、本当の問題点を露呈したのかどうかという是非は残ってしまったように思った。
世界にあるこのような現実
私は宇宙に問う。
「もっと宇宙と同調した世界になってくれ」