「丁寧に作られた佳作」ハンガリー連続殺人鬼 shantiさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧に作られた佳作
ハンガリーの映画を鑑賞する機会はそうそう無い中で、こちらの作品は佳作という出来でとても楽しめた。当時のハンガリー(マジャールと言った方が国際的か…)はソ連の影響が大きい社会主義国であり、行き過ぎた性善説によって、ユートピアである社会主義国には深刻な犯罪など存在しない。ましてや、連続殺人などがあるのは腐り切った西側諸国だけという、異常なお花畑が現実であると国民に徹底させる必要があるために、上級国家公務員たちが納得するシナリオが凶悪犯罪を過小に納める雑な犯罪捜査に繋がってしまったという背景があるようだ。似たような内容の作品で舞台は旧ソ連の「チャイルド44」でも、やはり雑な捜査と隠蔽がストーリーの核になっていた。人権の軽んじられる社会は、結果的に衰退し消える。現在の日本の状態がどうも頭の片隅にあって、空恐ろしさを覚えながら鑑賞した。社会主義の向こうに現れた全体主義。私たちも他人事ではない。
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