劇場公開日 2022年7月1日

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「「イーサン・ホーク、お前は許さん」となる(熱演ゆえ)一作」ブラック・フォン yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0「イーサン・ホーク、お前は許さん」となる(熱演ゆえ)一作

2022年8月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

『黒電話』という短編小説が原作の本作、少年少女が暴虐な存在に立ち向かう、という話の筋のためか、あるいは子供達の年齢や背格好、舞台となる住宅街の雰囲気が似ているためなのか、はたまた意図的な演出なのか、ついつい『IT』や『ストレンジャー・シングス』を連想してしまうし、実際のところ結構似通った部分もあります。といいつつ、前半は連続誘拐事件を巡るミステリー色の強い展開が続くため、もしかしてこのままリアル寄りの物語で進んでいくのかな、と思い始めた中盤以降に、予告編にも使われたなかなかショッキングな場面が出現し、不意を衝かれます。

この転換点でちょっと作品のリアリティライン(現実性の度合)を見失いそうになりますが、それ以外の場面に関しては、基本的に目の前で起きていることをそのまま受け取ってしまえば話の筋を見落とすことはなく、変な映像上のトリックもないので、どちらかというと「素直な」作りの作品と言えます。

それでも初めて黒電話が登場する場面では、一応心の準備ができていたつもりだけど思わず飛び上がりそうになるし、主人公が視線をふと転じると想像もしていなかった風景が飛び込んできたり…、と、要所要所に恐怖演出を入れるあたり、ジャンル映画としても余念がありません。

少し内向的な主人公の視線では腕っ節が強くて頼りになる友達も、より圧倒的な暴力の前では為す術も無い、という痛ましさを受け止めつつ、それでもなお難局を打開するために力を合わせていこうとする力強さには、怖さを忘れて思わず胸が熱くなります。

イーサン・ホークはマスクやメイクで素顔を見せないためなかなか彼とは気がつきにくいんですが、その憎らしさはかなりのもの。特殊な能力とかは使わない、普通に異常な男だけにその狡猾さや残虐さがかなり生々しく、とにかく嫌な気持ちにさせる演技を見せてくれます(ほめてます)。「お前は『ヘレディタリー』(2018)のパイモンにお仕置きされろ!」と思わず心で罵ってしまったのも一度や二度では。

まだあどけなさの残る少年ギャングの気合いの入り方にも感嘆!

yui