ロストケアのレビュー・感想・評価
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人を殺してはいけない・・を、問いかけられる
真正面からの問題提起。見終わっても答えが出せない。
自分には関係ないと思っていた事をこんなに深く鋭く突きつけれ胸はずっと苦しいまま。
多分原作の凄さなのだろう。
しかし、監督、演者がその原作から与えられたものを丁寧に道を逸れずに向き合っている事に感心する。
松山ケンイチと長澤まさみの対立のシーンは鳥肌もの。
脇を固める役者陣、誰一人として外さない。
そしてこれは安易な意見かもしれないが、政治家の皆さん、必見です。見る責任があります。
虚実と現実のせめぎ合い
なかなか難しいテーマを扱っていたからこそ観賞しようと思い至ったのですが、意外と演出が過剰というかわざとらしいというか、よく見慣れた役者さんが決まったようなセリフを言わされているなぁという印象が強くて、これは単に民の心を引くために現代的な問題をネタとして劇化しただけのものなのか・・・と不快な思いになってしまいました。
確かに見ていて気持ちの良い内容ではありませんでした。それは覚悟の上での観賞。でも虚飾が酷い・・・と思いきや、物凄く切実に感じる部分が徐々に挟み込まれている気がしてきて、もしかしたら、あのわざとらしい演出や演技はリアルなものをより現実味を持たせたり身につまされるものにするために敢えてそうしているのか!と・・・まぁ個人的な勝手な見方であり、そんなうまい具合に作られているようにも見えないですがねー。
とはいえ、虚実と現実がうまい具合にせめぎ合っているような印象を感じて、それによって非常に感情を揺さぶられ、さらには今の、いやこれからの高齢化社会というものを否応にも感じざるを得ませんでした。
予想よりも演出されたドラマだったけれども、内容から受け取ることが出来る思いは予想通りだったような気がします。
とっても考えちゃう映画でした
「見たくないもの」を突き付けられて、深く考えさせられる
認知症の老人と、その介護で苦しむ家族を救うための殺人を、一方的に断罪するような映画ではないし、ましてや、それを全面的に肯定するような映画でもない。
裁く側と裁かれる側の主張は対等に描かれているし、被害者の家族にしても、「救われた」と言う者もいれば、「じいちゃんを返して」と泣き叫ぶ者もいて、一体何が正しいのかと深く考えさせられる。
中でも、長澤まさみ演じる検事と、松山ケンイチ演じる介護士が、お互いの正義を激突させる取り調べ室のシーンは、2人の演技のぶつかり合いと相まって、この映画の最大の見どころと言っていいだろう。
確かに殺人は許されないことではあるが、個人的には、「安全地帯で綺麗事を言っている人間には、穴の底て這いずり回っている人間の気持ちは分からない」という介護士の主張は心に響いたし、彼の考えを100パーセント否定できる者はいないのではないかと思ってしまった。
切っても切れない親と子の関係性が「絆」にもなり「呪縛」にもなるという双方の主張も納得できるし、介護の問題を親子の問題として帰結させたラストにも、共感することができた。
「ロストケア」の是非はともかく、父親を殺めてしまったことに対する罪悪感と後悔を自覚できた時、介護士の魂は初めて救われたのではないだろうか?
絶対に見るべき空恐ろしい映画でした
これからの未来を
松山ケンイチの目が語り掛けてくる
自分がしたことは殺人ではなく「救い」だと主張する殺人犯・斯波(しば)。
検事・大友は対話を重ねるたびに介護の現実を突きつけられ、観る人とともに自身の正義を揺らがせていきます。
殺人犯・斯波(しば)を演じる松山ケンイチの目で語る演技がすばらしいです。
ある種の観念に到達してしまった斯波(しば)の激情が、彼の目で伝わってきます。
静かで動きが少なく盛り上げる演出もありませんが、実力ある俳優陣が作品を成立させています。
作中のところどころで余白があるように感じられましたが、「あなたに置き換えて考えてみて」と観る人に問いかけ考えさせる時間のようでした。
いっしょに鑑賞した福祉関連職の友人は、「よい教材になる作品」と言っていました。
知っているつもりで理解していなかった現実を突きつけてくる社会派の作品です。
本作は原作小説とは異なる構成になっているようなので、原作小説も読んでみたいと思います。
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