「法定での一言に救われた」ロストケア momonga2さんの映画レビュー(感想・評価)
法定での一言に救われた
この映画は、早朝の民家で老人と訪問介護センターの所長の死体が発見された事件をめぐる物語です。疑われるのは、献身的な介護士として知られる斯波宗典(松山ケンイチ)。検事の大友秀美(長澤まさみ)は、斯波が働く訪問介護センターでの老人の死亡率が異常に高いことに着目し、彼と対峙します。斯波は自分の行為を「救い」と主張するが、大友は真実を明らかにするために奮闘します。
観終わった後、松山ケンイチの演技力に感銘を受けました。特に最後の発言で、彼が法定で主張する「救い」に引き込まれ、納得しかかっていた自分がいました。しかし、法廷で遺族から「人殺し!」と叫ばれた瞬間、自分が救われた気持ちになりました。彼の演技が、観客の心に揺さぶりをかけることができる力を持っていると感じました。
この映画は、現代日本の高齢化社会の問題を描いており、観る者に深い考えを促します。社会のセーフティネットにかからない人たちの存在や、介護家族の厳しい現実を知ることができました。これにより、私たちが今後どのように高齢化社会に対処していくべきか、より具体的に考えるきっかけとなりました。
さらに、この映画は自分自身の親の介護が近づいていることを改めて感じさせてくれました。家族を介護する際の心情や責任、そして選択の難しさがリアルに描かれており、心に響く作品でした。
総じて、この映画は現代社会の問題を浮き彫りにし、観る者の心に訴えかける力がある作品だと感じました。演技やストーリーの面でも見ごたえがあり、そろそろ介護を迎える現役世代にオススメできる作品です。観終わった後、介護や高齢化社会について真剣に考え、自分自身や家族の将来についても見つめ直すきっかけを与えてくれました。家族や友人と一緒に観ることで、映画の内容について話し合いながら、より深く理解し合えることでしょう。
この映画はまた、高齢者への理解や支援が必要だけでなく、介護家族の苦労や犠牲も見逃してはならないというメッセージを伝えています。介護を担う家族が、心身ともに疲弊している場合も少なくありません。社会全体が、介護家族に寄り添い、支えることの大切さを再認識する機会となるでしょう。
また、映画の中で描かれる検事・大友秀美(長澤まさみ)のキャラクターも印象的です。彼女が被害者の家族を調査する中で、法の正義と斯波の信念に直面し、葛藤する様子が繊細に描かれています。このことからも、映画は単純な善悪の対立ではなく、人間の複雑さや多様性を浮かび上がらせる力がある作品だと言えます。
最後に、映画は観客に高齢化社会に対する課題や解決策について考える機会を提供し、私たち自身が何ができるのか、どのように社会に貢献できるのかを問いかけてくれます。今後もこのような問題提起がある作品が多く作られることを願いつつ、私たち一人ひとりが映画のメッセージを胸に、高齢化社会の問題解決に向けて歩んでいくことが求められます。