「いろいろ考えさせられる長編娯楽大作」RRR 鶏さんの映画レビュー(感想・評価)
いろいろ考えさせられる長編娯楽大作
以前観て中々面白かったインドの長編映画「バーフバリ 王の凱旋」の監督S・S・ラージャマウリがメガホンを取った新作というので、本作「RRR」も観に行ってみました。バーフバリシリーズは、インドの大昔の王国の世継ぎ争いをテーマにしていたので、戦争や殺し合いがあっても完全に空想の世界の御伽噺として観ることが出来る娯楽大作でしたが、本作はイギリスの植民地時代である1920年のインドを舞台にした物語だけに、いろいろと生々しさがあり、それが面白くもあり、かつまた(余計なことを)考えさせられるところもありました。
余計なことというのは、本作はインドを植民地支配し、インド人たちの誇りを踏みにじり、家畜同様に扱う悪逆非道なイギリス人の姿を描いている訳ですが、仮に本作が「日帝」時代の朝鮮半島を描いた映画だったらどうだったろうか考えると、そもそも観に行かないだろうな、と思ったりした訳です。何せ敵役のイギリス人の総督夫婦は、非の打ちどころ「しかない」悪者ぶり。もし「RRR」式の映画を撮る場合、ヒールの総督はやっぱり北村一輝なんだろうかとか想像が膨らんだりもしました。
実際「日帝」の悪逆非道を喧伝する映画は朝鮮半島や中国などにもあるようですが、まあ日本では普通観ないですよね。そうなるとイギリス人はこの映画を観ないんだろうか、それとも観るんだろうか、観る場合はどんな思いなんだろうかと考えたりもして。
そんな訳で、映画を純粋に観れば主人公2人に感情移入するのが普通なんでしょうが、本作のような背景となると、結構複雑な思いに駆られる部分があり、それが面白いと思える作品でした。
まあそういった余計なことは一旦脇に置いた感想としては、インド映画らしいミュージカル調のダンス&ミュージックがここぞというところで登場し、当方の期待に充分応えてくれました。特にダンスは超高速で、今様にアレンジされており、見応えたっぷりでした。しかも前半部の山場とも言える悪玉の総督の屋敷で開かれたパーティにおけるダンスシーンは、主人公たちのインド人サイドだけでなく、イギリス人サイドも踊りに参加してダンスを競っており、これは結構斬新なシーンでした。余計な話に戻ると、朝鮮半島や中国の「日帝」物で、日本人は踊らんだろうと。
しかも主人公の1人であるビームと良い仲になるイギリス人女性ジョニーが、ビームをいろいろと手助けしてくれたりもする。この辺の設定は、100%イギリスを悪者にしていないようでいて、イギリス側から見ると完全に分断されてしまっているいるようにも思えたりもするので、中々巧妙な創りだと思わざるを得ませんでした。
とは言えイギリスではインド系のスナク氏が首相に就任した直後なだけに、「いや~、時代は変わったなあ」と思い映画館を後にしました。
そんな訳で、167分の長さだった「バーフバリ 王の凱旋」よりさらに長い179分にも及ぶ娯楽大作でありながら、途中全く飽きさせず、かついろいろと考えさせてくれた本作の評価は、最高の★5としました。