劇場公開日 2022年10月21日

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「好きなものを見つけた若者の成長記」線は、僕を描く みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5好きなものを見つけた若者の成長記

2022年11月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

悲しい

興奮

知的

冒頭から、水墨画の、圧倒的な迫力、生きているかのような生命力に心を鷲掴みにされ、作品世界に一気に惹き込まれる。本作は、そんな水墨画に魅せられ、直向きに水墨画に挑んでいく若者の成長記である。

本作の主人公は、大学生の青山霜介(横浜流星)。彼は、家族を失った喪失感を抱えて生きていた。そんな彼がバイト先で水墨画と出会い一瞬にして魅了され覚醒していく。巨匠・篠田湖山に誘われ弟子になった主人公は、戸惑いながらも、次第に、湖山の孫である先輩弟子の篠田千瑛(清原果耶)と切磋琢磨して、水墨画の世界に挑んでいく・・・。

私は、時代劇ファンなので、水墨画を見る機会は多いが、描画シーンを見たことはなかった。繊細さと豪快さを併せ持つ本作の描画シーンは圧巻だった。何より、鬼気迫る描き手の気迫、表情が凄い。己の想いを水墨画に注ぎ込んでいる感があり感動的だった。

主人公は、当初、手本通りの水墨画に拘るが、湖山に、自分の線を描けとヒントを貰い、自分の線を心血を注いで描いていく。何枚も何枚も納得がいくまで描き続ける姿に、水墨画を究めたいという主人公のストイックな想いが溢れている。演じる横浜流星が好演している。

湖山を演じる三浦友和の巨匠らしい佇まいが作品に落ち着きを与えている。湖山は主人公にも千瑛にも細かな助言はしない。ヒントを与えるだけ。水墨画を究めるためには、模倣だけではダメであり、独創性、自己解放が必要だからである。

一番弟子の湖峰役の江口洋介が良い味を出している。湖山の難問に苦悩する弟子達にさり気ない助言をして弟子達の成長をアシストする。裏方が多かったが、終盤の見せ場は流石。正しく能ある鷹は爪を隠すである。

ラストシーン。出来過ぎの結末だが、本作のクリーンな作風には合致している。
続編があっても良い。主人公と千瑛が、更なる高みを目指してしのぎを削る続編が観たい。

好きなものを見つけたら、迷わず挑んでいけ。本作のメッセージである。

みかずき
グレシャムの法則さんのコメント
2023年1月19日

役者としての成長もあわせて、本当に続編が見たい‼️です。

個人的には、平手友梨奈さんの『響』なんかもその後の成長振り(作品中での成長、役者としての成長)、暴れっぷりを見たいなんて思ってるのですが…

グレシャムの法則
パダワンさんのコメント
2022年12月30日

フォロー、コメントありがとうございます

共通作品多くフォローさせてもらいました
悲しみを乗り越え水墨の世界に打ち込む様は良かったですね

原作も映画を超えるほど面白かったのでお時間あれば読んでみてください

パダワン
2022年11月18日

家族を失った悲しみを乗り越えようと水墨画に没頭する姿にポジディブな気持ちになりました。
また、コメントくださいませ☆

美紅
2022年11月18日

ストーリーの中の水墨画は繊細でもあり、大胆でもありました。エンディングが流れたときに俳優一人ひとりの名前が墨と筆で書かれていて、躍動感があってとても粋でした。感心したラストでした。

美紅
2022年11月18日

みかずき様★、コメントありがとうございました。

美紅
kossyさんのコメント
2022年11月16日

みかずきさん、丁寧なコメントありがとうございます。
文系スポ根というジャンルもかなり定着してきましたね〜
これからも増えてほしいです!

kossy
赤ヒゲさんのコメント
2022年11月14日

みかずき様

お邪魔します。

>繊細さと豪快さを併せ持つ本作の描画シーンは圧巻だった。何より、鬼気迫る描き手の気迫、表情が凄い。己の想いを水墨画に注ぎ込んでいる感があり感動的だった。

とても臨場感がありました。俳優さんたちは相当練習したそうですが、全部、俳優だけで書き上げたとしたら、到底信じられません!

>ラストシーン。出来過ぎの結末だが、本作のクリーンな作風には合致している。続編があっても良い。主人公と千瑛が、更なる高みを目指してしのぎを削る続編が観たい。

なかなかよいラストシーンでした。この作品の世界が大好きになったので、確かに続編も観てみたい気がします。でも、この素晴らしい世界のまま、ずっとパックしておきたい気もします(笑)。

赤ヒゲでした。

赤ヒゲ
さんのコメント
2022年11月10日

みかずきさん
悶です。
コメントありがとうございました。
久々の共感作ですね。

この作品の見どころは、主人公たちが水墨画を描く際の、その情熱が伝わってくるところだと思います。
鑑賞後に調べてみると、この原作小説の作者は、水墨画家だそうで、主人公の霜介には、作者自身が投影されているかもしれません。
また、実際の水墨画家が書かれた小説が原作なので、作品全体には、かなりリアリティがあるのではないか、と思います。
みかずきさんの仰るとおり、水墨画は生きているとしか思えませんね。
真っ白な紙に、墨だけで描かれたものは、まるで、本当に存在しているかのようです。
水墨画家たちが、白い紙に命を吹き込んでいるとしか思えません。
本作品は、そうしたことが、映像から伝わってきて、圧倒されながらの鑑賞でした。

それでは、また、共感作でお会いしましょう。

悶
アローさんのコメント
2022年11月9日

みかずきさん、フォロー&ご丁寧なコメントありがとうございます♪
キネマ旬報とはかなりの上級者ですね。

「アキラとあきら」に続き、江口洋介さん最近良いですね!
今後もレビュー拝見させて頂きます。失礼します。

アロー