「線を見つける」線は、僕を描く よっちゃんイカさんの映画レビュー(感想・評価)
線を見つける
小泉監督の前作「ちはやふる」3部作はかなり好きな作品で次回作が待ち遠しいと思っていた。
その小泉監督の四年ぶりの最新作。
期待MAXで見に行った。
小泉監督はその期待をまた軽々しく超えてくれた。
競技かるたに続いて今度の世界は水墨画の世界。
今作も音楽、演出、演技、撮影共に超一流。
特に描き始める前、一瞬の静寂の後筆を紙につけると素晴らしい音楽が流れる。
これが素晴らしい。
又、線を引くという行為を最大限かっこよく撮るカット割り(もちろん水墨画自体とてもかっこいいことだとは思いますが)。
紙の向こう側から描いてる人物の顔を撮るカット割はさすがちはやふるのスタッフといった感じ。
画面も全体的に明るくてその中で役者が生き生きする様子はまさに“真っ白な紙にいきいきと自然が描かれていく”水墨画のよう。
自分を見失って悩む感覚は自分もわかる。
というか今絶賛そんな状態になっている。
何者にもなれないのではないか。
そんな漠然とした不安がある中、この映画の中の人々は「なるのではなく変わっていく」ということを教えてくれる。
自然は春夏秋冬移り変わっていく、その流れに身を任せ生きていく。
そしてその中で自分なりの線を見つける。
当然季節が移る中でその線も変わっていく。
僕が好きな歌舞伎でよく「有為転変の世」という言葉が出る。
この映画を見た時この言葉がなぜか頭に浮かぶ。
自然の摂理には抗えないからそことうまいこと付き合い流れながら生きていく。
湖山先生が霜介にこんな教えを説くシーンでは特に泣かせるようなシーンでもないのに涙が溢れて止まらなかった。
役者さんも素晴らしい。
清原さんの細部までこだわった演技が今作でも遺憾なく発揮されていて、特に最後湖山先生から認められた時に顔が徐々に綻んでいく様は至高の演技。
横浜流星さんのまっさらな青年感が堪らなく素晴らしい。
江口洋介さんは最近のギラギラした悪役とは打って変わった役柄だったが当たり前のように素晴らしく、特に水墨画を描いてる時の楽しそうな表情が忘れられない。
今、自分に迷ってる人に是非見てほしいおすすめ映画。