「ちょっと苦言も言っておきます。」仕掛人・藤枝梅安2 TWDeraさんの映画レビュー(感想・評価)
ちょっと苦言も言っておきます。
第1部のポストクレジットシーンから始まる本作、ネタバレなしでレビューを書くことは困難のため「ネタバレ注意」にしておきます。悪しからず。
2部構成にはなっていますが、制作については通しで行われているわけで、キャストは勿論、制作陣も変わらず根本的な部分で印象は変わりません。一言でいえば「好きです」ね。
まず、脚本は概ね申し分ない出来だと思います。仕掛人には「因果」がつきものです。第1部は主に梅安の過去であり「わだかまり」としてまつわり続ける「母、妹」の話がベースにありましたが、第2部は「ある男」の登場をきっかけに、相棒である彦次郎の過去が解き明かされ、また意外な展開でまた別の梅安の過去が絡んでいきます。自分が仕掛けた仏を見ながら「次は自分が」と思い続ける彼らは、どこか本能的に「自分の死に時」を選ぶような選択をします。今回も腕の立つ浪人(+取り巻き5人)の仕掛けをあっさり請け負う梅安。彦次郎のために躊躇のなく命をかける選択をするところは胸アツです。
ただ、取り敢えずここで一旦苦言を挟みますと、、、1部のレビューでも少々触れましたが、肝心な仕掛けの中で一部巧くない演出があり残念です。今回、6人の仕掛けのうち、4人目(実際には3人)までは特に悪くありません。基本、梅安の仕掛けは小細工のないシンプルさがカッコよさでもあります。そこからの5人目、6人目の仕掛け。仕留め方は別に悪くはないんです。仕掛人の目的は確実に殺すことであり、自分より腕の立つ相手に真っ向勝負を挑む必要はないわけで、あんな方法も否定しない、のに、なんでそこ、苦しみだす順を逆にしたのか。。反って井坂が苦しみだす瞬間に注目してしまう分、椎名さんの演技が「アホっぽく」見えてしまう残念さ。。。別に、飲んだ順で苦しみだしていいのに、何であんな演出するだろうか。かなりカッコ悪いです。がっかり。。
そして舞台は江戸にもどります。京都でまたもや自分の過去の因縁と立ち向かうこととなった梅安。自分で選んだ「死に時」とは違い、付け狙われる対象となったことで動揺しますが、やはり梅安のよりどころ「おもん」の登場で、観ている私たちも救われます。今回のおもん役、菅野美穂さんは何だかハマりが絶妙なんですよね。。一見、拙く見える演技なんですけど、芯の強さや包容力を感じて結局は「恐れ入りました」と感じます。ちなみに、池波作品における重要なポイントは女性と料理です。2部では特におるい役の篠原ゆき子さん、ポイント高いですね。素晴らしい。そして、料理では彦次郎の「醤油の焼き握り飯」。思わずハラが鳴りましたw
さて脱線しましたが、後半は仕掛ではなく因縁との決着です。死を覚悟しながらその時を待ち、そして対決へと至るわけですが総じて悪くない出来です。彦次郎も大活躍。ただ、ここでもう一つ苦言です。佐々木八蔵、、井上半十郎の相棒なんでしょうけど、この佐々木については何の掘り下げもないため、仕事でもなければ因縁もないのに、なんで梅安たちと戦ってるの?エピソードの一つでもあれば、井上に付き合っている理由も見えるのに、伊達にイケメン配役してるので反って悪目立ちで違和感です。
とまぁ、苦言を挟みつつも2部作通して満足の仕上がり。まだまだ続いてほしいと思いつつ、そもそも2部作の終わり方は「完結」と言った感じは皆無です。そこで「今回も何かあるな」とエンドクレジットを観ていると「!」。やはりありました。本編にはいなかったはずのあのキャラクター。そして配役のお名前。もう皆さん解っているようで(私の周りで)立ち上がる人はいません。そしてお約束のポストクレジットシーン。「出ました、池波ユニバース!」。鑑賞後に映画.comで確認すると24年5月にあるタイトル名とキャスティングを発見です。これ、単にポストクレジットシーンにおける「サービスショット」なの?それともまさかの「クロスオーバー」させるのか?ユニバース化実現の有無はかなり楽しみですが、情報は入れ過ぎないように来年を待ちましょう!