「おかしなことに"おかしい"と言えない世の中」君たちはまだ長いトンネルの中 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)
おかしなことに"おかしい"と言えない世の中
公開劇場数はかなり少ないし、どうしてもチープな部分はあるものの、今年公開された日本映画の中でトップクラスの作品といえる本作。
学校の先生や政治家、池上〇といった、コメンテーターが垂れ流している間違いだらけの日本経済情報に女子高生がズバズバと切り込み、論破していく爽快感が見事で、いかに国民が間違った情報に踊らされているかが、どんどん浮彫になっていく。
それは『パンケーキを毒見する』のように、徹底的に政権批判をしているだけで、何の答えも見いだせない、ただのネガティブキャンペーンのような映画とは全く異なりながら、それでいて右翼・左翼に分かれたような極論ではない。
根本的に国の言っていること自体が間違っているという、ただ単純でストレートな主張と問題点への指摘でしかないのに、なぜかそれが変人扱いされてしまうおかしな世の中。
大人たちは、社会やメディアというものが作り出す「風潮」によって、いつしか「おかしい」と思っても、それを言う勇気や発言権さえも奪われていってしまい、それに逆らう気力も失われてしまう。
大人になるということは「疑問を持ってはいけない」ということなのだろうか……いや、そんなバカな話はない。
社会への忖度がなく、しかし社会に出ることが間近となった高校生という、子どもと大人の中間的視点だからこそ、「おかしいこと」に「おかしい」と言える。本来、全ての国民がそうでなければならないというのに、どうなっているのだろうか……。
ひとりひとりの国民がもっと日本経済というものを意識して、興味を持ち、変えていかなければならないという、そんな当たり前のことが身に沁みてわかる作品である。
文部省推薦の、ただ泣ける要素の詰まった映画よりも、よっぽど学校で見せるべき映画だと思う。