エコー・イン・ザ・キャニオンのレビュー・感想・評価
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ぜひ「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」とセットで
個人的な話から始めて恐縮だが、本作で案内役のジェイコブ・ディランがフロントマンを務めるザ・ウォールフラワーズの野外ライブを、1998年9月サンフランシスコのゴールデンゲートパークで観ていた(対バンはほかにスマッシュマウス、シックスペンス・ノン・ザ・リッチャーなど)。日本のフェスとは趣がかなり違い、だだっ広い芝生ゾーンに観客がそれぞれビールや軽食などを持ち込んで適当に座り、録音や撮影も特に規制されておらず、思い思いに楽しんでいる雰囲気が心地よかったのを覚えている。当時流行っていた「The Difference」を含むアルバム「Bringing Down the Horse」のCDも買ったくらい好きだったのに、その後ほとんど聴かなくなっていたので、本作で思いがけずジェイコブに“再会”したような感慨を覚えた次第。
前置きが長くなったが、本作は、60年代のローレル・キャニオンを中心として誕生したウェストコースト・ロックの名曲を集めたトリビュートアルバムが50周年記念として作られ、それに合わせて製作されたドキュメンタリー映画だ。比重としては、ジェイコブをはじめベック、ノラ・ジョーンズ、フィオナ・アップルら中堅どころのミュージシャンが(大御所たちとのセッションも交えながら)往年の名曲をカヴァーするパフォーマンスがメインになっているので、可能なら5月上旬に封切られた「ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック」(こちらはオリジナルの名曲たちをたっぷり聴かせてくれる)を先に観てから本作に臨むとより楽しめると思う。ブライアン・ウィルソン、エリック・クラプトン、ニール・ヤングらの演奏も聴けて、洋楽好きならかなり楽しめる内容になっている。
そうそう、ザ・バーズのロジャー・マッギンがジェイコブと話しながら何の気なしにジャラーンと鳴らすマーティンのアコースティックギターの乾いた音が抜群に良くてびっくりした。別にそばにマイクを当てたりとかもしていないのに、あの響きは一体何なのだ、とアコギ好きにはたまらない高音質収録でもあることも記しておこう。
【”相乗効果”1960年代、フォークとロックが融合して、素晴らしい楽曲の数々が生まれて言った経緯を、ジェイコブ・ディランが追ったミュージックドキュメンタリー作品。】
ー 私事で恐縮であるが、年代的には1960年代の事はリアルタイムでは、知らない。
但し、今作でインタビューもしくは取り上げられたバンドが、
「ザ・バーズ」
「ザ・ビーチボーイズ」
「ザ・ビートルズ」であり、その他現役ミュージシャンでもベックが重要な役割を果たしていた事から、すんなりと楽しく鑑賞出来た。-
◆感想
・ボブ・ディランを父に持つ、ジェイコブ・ディランが故トム・ペティ・・(エンドロールで、トム・ペティに捧ぐと、テロップが流れる。)エリック・クラプトン、ブラィアン・ウイルソン(お元気そうである。)にインタビューしつつ、1960年代から70年代のカリフォルニアの音楽の輝きに迫って行く。
・「ザ・バーズ」「ザ・ビーチボーイズ」「ザ・ビートルズ」の主要メンバーが、海を越えて如何に影響を与えあっていたかを語る部分は、特に貴重である。
「ラバー・ソウル」から「ペット・サウンド」が生まれ、「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」が誕生する。正の連鎖である。
ー それまで、フォークとロックには隔たりがあり、米英でも同様だったのが、スーパーバンドはその壁を軽々と、乗り越えて行ったのである。
相乗効果とは、音楽でも且つては、起こっていたのだなあ・・。-
<ブライアン・ウイルソンがすっかり貫禄が出ていたが、もう、「ペット・サウンド」のアレンジは止めたんだよね!>
<2022年9月2日 刈谷日劇にて鑑賞>
ウェストコースト・ロックの栄枯盛衰を見てきたレジェンド達の名言が暗に炙り出す事実に胸を抉られました
『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』とは異なるアプローチで当時のウェストコースト・ロックの誕生から衰退までを俯瞰するドキュメンタリー。面白いのはボブ・ディランの息子ジェイコブ・ディランがインタビュワーとしてレジェンド達から様々な証言を取りながら、ベック、フィオナ・アップル、レジーナ・スペクター、ノラ・ジョーンズ、キャット・パワーといった今まさに活躍中のアーティスト達と共に当時の名曲をカバーするライブの準備を進める構成となっていること。ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、ミシェル・フィリップス、トム・ペティといったレジェンド達の語る証言はどれも金言で胸がときめきました。赤裸々にも程がある当時の恋バナを嬉々として語るミシェルのキュートさはもう格別で、彼女がそこにいただけでローレル・キャニオンはシャングリラだっただろうなと思いました。あと今は亡きトム・ペティがバカみたいにカッコよくて穏やかに笑っている横顔を見るだけで涙が溢れてきました。
鮮烈なのはウェストコースト・ロックが急速に衰退していった理由がレジェンド達の名言の中に透けて見えてくること。ヒッピーコミュニティよろしくアーティスト達が頻繁に交流し様々なアイデアを持ち寄って次から次に作品を仕上げていく過程で今でいうパクリはむしろお互いに容認し合っていて、そういうオープンソースが囲い込まれて行くのと並行してポップスもロックも大きく変容していくその皮肉な侘しさもしっかり捉えているのが印象的。多様性が進んだ半世紀後のロックやポップスにそれほど惹かれないのは当時あった包容力が失われた結果なのかも知れないと考えさせられました。
『ローレル・キャニオン』を観た後では...
貴重な映像・写真・インタビューをギュンギュンに詰め込んだ世界遺産的な『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』と続けて観た。作品のタイトルやチラシを見ても両者の違いがよく分からなかったが、コンセプトはまったく違っていた。
共通項は60年代後半のローレル・キャニオン、そしてウェストコースト・ロック。
今作はアンソロジーではない。
ボブ・ディランの息子のジェイコブ・ディランがレジェンドたちにインタビューし当時を振り返る。
ネクスト・ジェネレーションの代表格トム・ペティからスタート。ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、スティーヴン・スティルス、デイヴィッド・クロスビー等の言葉に熱くなり、ロジャー・マッギンの名人芸と言える弾き語りに痺れた。
アナザーサイドとして、ジェイコブが中心となり当時の音楽に影響を受けたアーティストたちを集めてのトリビュート・ライブとアルバム制作の企画から実現までを追う。
ジェイコブにベック、ノラ・ジョーンズ、フィオナ・アップル等のリスペクト溢れるパフォーマンスも悪くない。
、、、が、やはり見劣りする。『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』が凄すぎた。
もっとジェイコブが聴きたくなった!
1960年代のフォーク・ロックの起こりはロスのローレル・キャニオンが始まりであったらしい。そこにはブライアン・ウイルソンの率いるビーチボーイズはすでに住んでいて、ロジャー・マッギン、クロスビーのザ・バーズが移り住み、カルフォルニア・ドリームのヒットを放ったママ&パパス、それに、 スティルスとニール・ヤングがいるバッファロー・スプリング・フィールド。そして、英国からもビートルズ、エリック・クラプトンなどもここに集まってきたと。お互いが影響しあって曲を作っている。現在なら、似
てるよ、コピーだねと言われ、著作権の問題に発展して大騒ぎになるかもしれない曲づくり。
ザ・バーズのターン、ターン、ターン、で始まり、生きていくのが軽くなる曲だねえ。
The Byrds -The Bells of Rhymney (1965)もいいねえ。
ローレル・キャニオンの60年代のドキュメンタリーだとはタイトルから想像できなかった。ローレル・キャニオンはロスのハリウッドの近くにある有名な歌手の住処で、YouTubeでここの芸能界のゴシップのようなものを見たことがある。これとは大違いで、ボブ・ディランの息子、ジェイコブ・ディラン(Jakob Dylan)の製作力に感嘆、でも、彼のインタビューの下手さには最初は呆れていたが、そのうち、これは感情を表現できない人の自然の姿そうなので、かえって、好感が持てた。彼の曲をもっと聞こうと思わせるような人だ。今はBuffalo Springfield でもなく、The Byrdsでもなくジェイコブうが演奏する60年代の曲を楽しんでいる。
このドキュメンタリーは私にとって中身が濃くて目が離せなかった。ジェイコブが1960年当時の歌手、ポール・マックギン、デビット・クロスビー。スティーブン・スティルス、ブライアン・ウイルソン、ミッシェル・フィリップス、リンゴ・スターなどにインタビューをする。そこに、70年代過ぎまたは60年代後半にローレル・キャニオンに参入したかと思われる、ジャックソン・ブラウンやトム・ペティーたちの回顧録的なインタビューが加わる。トム・ペティはここを『伝統的なパラダイス』だと言っている。ジェイコブ・ディランがバーズ、バッファロー・スプリング・フィールドなどの曲の再演をロスのオフューム劇場で(Orpheum Theatre)で開く。最初の方で、監督のアンドリューがステージでジェイコブと二人の共作だと。60年代のフォーク・ロックのアーカイブとジェイコブのグループの演奏をうまく取り入れて合わせているドキュメンタリー。そこには最近、影響を受けた歌手、ベック、フィオナアップルなども加わっているが、私はこれらの影響を受けた人々の曲を全く知らない。この時代はインターネトがなかった時代だから、今にすると稀に見る、インフォメーションがぎっしり詰まっている映画だ。
Echo In The Canyon (Jakob Dylan and Beck) - Goin' Back これもいいねえ。
個人的にはビーチ・ボーイズ、ザ・バーズ、ママ&パパス、バッファロー・スプリング・フィールドを60年代後半以降になって聞いていると思う。クロスビー・スティルス・ナッシュの1969年Crosby, Stills, Nash & Young - Teach Your Childrenからフォークロックを聴き始めて、前に戻って聞いているから、80%の曲は馴染みがある。特にバーズが好きだったが、ビーチボーイズはサーフィン音楽だと思っていた。私もそうだが、ジャクソンブラウンもこのインタビューで彼らの曲を『つまらない』と思っていたらしい。 しかし、Pet Sounds で見直したようだ。 このアルバムの歌詞をよく読む必要があると思った。
最後のシーンが一番好き、 Expecting To Fly Jakob Dylan and Regina Spektor この曲の、最後がビートルズのサージャント・ペッパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドの『A Day In The Life』途中や最後ように終わる。その後、ニール・ヤングがガラスの向こうで『What's Happening』を演奏している。しかし、歌はジェイコブがギター弾いて歌っていて、この曲はデビッド・クロスビーが作った曲。 当時はこうやって混ざり合って音楽を楽しんだり、アルバムにしたりするのが自然だったという意味が含まれているから好き。こういうシーンがロスのサンセットスタジオとロンドンのレコーディングセッションの場でも見られた。曲はBuffalo Springfield の『Questions』だったかな?
最後にはトム・ペティーに捧げると文字で。
バッファロー・スプリング・フィールドFor What It's Worth & Mr. Soul 大好きだった。
必見のドキュメンタリー
*Tom Petty and the Heartbreakers: Runnin' Down a Dream : トム・ペティ
*ジャクソン・ブラウン/ゴーイング・ホーム: ジャクソン・ブラウン
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