劇場公開日 2022年5月27日

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「ウェストコースト・ロックの栄枯盛衰を見てきたレジェンド達の名言が暗に炙り出す事実に胸を抉られました」エコー・イン・ザ・キャニオン よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0ウェストコースト・ロックの栄枯盛衰を見てきたレジェンド達の名言が暗に炙り出す事実に胸を抉られました

2022年6月13日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

『ローレル・キャニオン 夢のウェストコースト・ロック』とは異なるアプローチで当時のウェストコースト・ロックの誕生から衰退までを俯瞰するドキュメンタリー。面白いのはボブ・ディランの息子ジェイコブ・ディランがインタビュワーとしてレジェンド達から様々な証言を取りながら、ベック、フィオナ・アップル、レジーナ・スペクター、ノラ・ジョーンズ、キャット・パワーといった今まさに活躍中のアーティスト達と共に当時の名曲をカバーするライブの準備を進める構成となっていること。ブライアン・ウィルソン、リンゴ・スター、エリック・クラプトン、ミシェル・フィリップス、トム・ペティといったレジェンド達の語る証言はどれも金言で胸がときめきました。赤裸々にも程がある当時の恋バナを嬉々として語るミシェルのキュートさはもう格別で、彼女がそこにいただけでローレル・キャニオンはシャングリラだっただろうなと思いました。あと今は亡きトム・ペティがバカみたいにカッコよくて穏やかに笑っている横顔を見るだけで涙が溢れてきました。

鮮烈なのはウェストコースト・ロックが急速に衰退していった理由がレジェンド達の名言の中に透けて見えてくること。ヒッピーコミュニティよろしくアーティスト達が頻繁に交流し様々なアイデアを持ち寄って次から次に作品を仕上げていく過程で今でいうパクリはむしろお互いに容認し合っていて、そういうオープンソースが囲い込まれて行くのと並行してポップスもロックも大きく変容していくその皮肉な侘しさもしっかり捉えているのが印象的。多様性が進んだ半世紀後のロックやポップスにそれほど惹かれないのは当時あった包容力が失われた結果なのかも知れないと考えさせられました。

よね