「人生のミラクルをマジカルで描く未来の映画」さかなのこ ONIさんの映画レビュー(感想・評価)
人生のミラクルをマジカルで描く未来の映画
愛に狂った人もいれば映画に狂う人もいるし魚に狂う人もいる。クレイジーフォーフィッシュ、そんな人がどうやって世の中を泳いでいけるか、の話。その結論は「一魚一会」、出会った人なんだ、というのをファンタジックにもコメディにもブラックにも突きつける凄み。怪作にして快作、いやミラクル作。
とにかくのんが凄い。相手の話を聞いてるのか聞いてないのかわからないボケっぷりと挙動不審な動き、そして喜び、加えてあらゆるアクション表現。画面の彼女に釘付けになる。特に高校時代のヤンキーとのやりとりのうちに周囲すべてを味方にしてしまう流れは圧巻。フィルム撮影とパスカルズのアナログ的な音楽の魅力と相まってミュージカル的な愉快さもありつつ、さかなクン本人の演じるギョギョおじさんというのがアナザーサイドさかなクン、というかさかなクンになれなかったさかなクンというのを設定していて、しかもその人との出会いによって子どもたちのヒーローとしてお魚博士になる主人公。
ラスト、幼い日のギョギョおじさんとの出会いと同じシーンが繰り返されるが、怪しいおじさんではなく子どもたちに追いかけられる(しかもカラフルなランドセルの群れ)人気者になるというパラレルワールドファンタジー。走っていくこの姿、群れに涙が止まらない。希望そのものが走ってる。エモが塊になって海へ向かう正体不明の感動。
かつて「フォレストガンプ」には「一期一会」というサブタイトルがついていた。そして日本のフォレストガンプとも言われた「横道世之介」の沖田修一の一期一会のテーマの進化系にして沖田作品の集大成。
のんはテレドラマ、アニメの代表作の上に、遂に実写映画の代表作を残した。加えて子役時代のミー坊もとてもよかった。天衣無縫な本物の子どもを冒頭に見た上でののんの登場はとても厚みがあった。天才柳楽優弥と磯村勇斗と岡山天音、ヤンキーたち含めて配役は完璧。とにかく笑える。