「抽象的なところにいかない学び」さかなのこ 文字読みさんの映画レビュー(感想・評価)
抽象的なところにいかない学び
2022年。沖田修一監督。さかなクンの自伝をもとに、その半生を描く。「男とか女とかどうでもいい」というタイトル前の字幕はあるものの、女性の俳優のんがさかなクンと思しき男性を演じている以外は、「男とか女とかどうでもいい」は特にテーマになっているわけではない。
好きなことを貫き通すことともに強調されているのは幼いころからのつながり。確かに、勉強して知識を身につけることは、幼いころの周囲の生活環境から抜け出すことを意味する面もあるので、そのアンチテーゼとして、抽象的な学びではなく、幼いころからいやおうなく関係してきた人々との具体的な人間関係や内面から湧き上がる思いに沿った学びが実を結ぶということになるのだろう。
多様性や好きなことを貫くというテーマはすばらしいし、たしかに中性的なさかなクンを女性の役者が演じるのもおもしろいが、映像のつながりや物語の展開に惹きつけられるところがあるかというとそういうものはない。ただ、のんという役者の得体の知れなさはよく伝わってくる。
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