「細かい伏線回収を楽しむのもよし、単純にアクションを楽しむのもよし。」ブレット・トレイン あふろざむらいさんの映画レビュー(感想・評価)
細かい伏線回収を楽しむのもよし、単純にアクションを楽しむのもよし。
伊坂幸太郎原作、ブラッド・ピット主演で、日本が舞台。ということで話題になった作品。製作費は120億円で、興行収入は344億円と、大ヒットを飛ばした。
監督は「ジョン・ウィック」のデヴィッド・リーチ。「ジョン・ウィック」の頃は、スタントマン出身だからアクションがいい、という評価だったが、「デッドプール2」「ワイルド・スピード/スーパーコンボ」の監督でもある、となると、アクションが得意なのはもちろん、ヒットメーカーであることもつけくわえる必要がある。
このような制作陣なので、アクション満載の娯楽作品に仕上がっている。
東京から京都に向かう新幹線に大量の殺し屋が乗り込んでそれぞれの目的のために戦う、というもの。ずっと殺し合いをしているのだが、それぞれの背景が途中で語られ、なおかつそれが伏線となってあとで回収される。どこまでが伊坂幸太郎の原作通りなのかわからないが、かなり複雑な作りになっている。
これがヒットの一因だろう。深読みすればするほど楽しめるし、単純にアクションを観るだけでも十分楽しい。新幹線の中で戦っているだけとはいえ、マンネリにならないようにかなり練っている。
本作は殺し屋の話なのだが、社会の縮図のようである。
孫請けの孫請けの、みたいになっていて雇い主がよくわからなかったり、結構漠然とした指示で仕事をさせられていたり。そしてみんなあわただしい。今の仕事は打ち合わせやメール、なにかをしているときにスマホに着信、と息をつくひまもなく、複数の作業を同時に進めなくてはならないことも多々ある。
殺し屋も会社員も同じ、とは言わないが、少なくとも本作はそういう意図があるのではないか。
誰もが生きる理由があって生きている。同時にみんな自分のことで一生懸命で、まわりのことが目に入らない。
勘違いしている日本の表現というのもうまくて、ダサかっこいいデザインが印象的だった。
こういう娯楽に徹した作品というのも、観ていると発見があるものだ。