「重ねた工夫の成果で、前作よりは格段に出来が上がっている」鋼の錬金術師 完結編 復讐者スカー ジュン一さんの映画レビュー(感想・評価)
重ねた工夫の成果で、前作よりは格段に出来が上がっている
コミックスで言えば、前作(2017年)は、ほぼほぼ10巻まで。
そして本作では、例えば1巻からのエピソードの借り出しはあるものの、
ほぼほぼ13巻まで。
なので「To Be Continued」の文字をスクリーン上に見た時は、
(どれだけの尺を取るのかは分からないが)次作で27巻までを描き切れるのかと
不安がとととと胸をよぎる。
相当の省略をしないと何ともならないよねぇ、と。
なまじ原作の構成がしっかりしているだけに、
忠実に作っていれば、良作になるのは論を待たず。
それを変に手を入れてしまうことで、
矛盾や疑問が湧いてしまう。
それが無残にも表出してしまったのだが前作で、
脚本・演出・役者(特に子役)の三拍子が揃ってダメとの、
無残な一本。
今回も、先に挙げた組み換えがあることで、
設定的にも違和感のある印象。
とは言え本作、全体的な出来としては前作よりもかなり良くなっている。
あれから五年も経ち、主要な二人にもかなりの進歩がみられるはその一因。
加えてアクションについては最初から薄めにしてしまい、
人間関係や心理のドラマ部分を厚めにしたことが
全体的な仕上がりには吉となった。
もっとも、歳月の経過は残酷で
『本田翼』は29歳になり、
『山田涼介』も同い年か。
なので、少年から青年への成長譚とのテーマは
かなり斟酌をしないと辛い状況。
一方で、『ウィンリィ』を演じる『本田翼』が
原作と同じ服装で出て来るので、
健康的を通り越した艶めかしい肢体になってしまい、
鑑賞する側からすれば嬉しい余禄。
『寺田心』の演技が酷いコトを除けば、
新たに登場した全ての人物について(いや、過去作もそうであったのだが)、
役柄にぴたりと嵌ったキャスティングと造形、
とりわけ
『ランファン(黒島結菜)』
『キンブリー(山田裕貴)』
『アレックス・ルイ・アームストロング(山本耕史)』
『ホーエンハイム(内野聖陽)』
『ブラッドレイ(舘ひろし)』
は、素晴らしい。
どうやら次作でも、この流れは踏襲されるよう。