「震災と航空機事故が起きた週に日本公開される間の悪さよ」エクスペンダブルズ ニューブラッド 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
震災と航空機事故が起きた週に日本公開される間の悪さよ
娯楽映画には日常の悩みを忘れさせてくれたり、憂いを晴らしてくれたりする力がある。とはいえ、元日の能登半島地震で大勢が死傷し今なお安否不明者も数多く、また2日の羽田空港では日本航空機と海上保安庁機が衝突炎上し海保職員5人が死亡する事故が起き、多くの人が心を痛めたり不安に思ったりしているこの日本で、派手なドンパチが売りの「エクスペンダブルズ」シリーズ第4作が公開されるのは、作品に罪はないとはいえ間の悪さを否めない。本作に限らず、事件や事故、災害などの描写を含むフィクション作品が、類似するか連想させるような現実の出来事によって興行や放送や販売に影響を受けるのはままあることで、そうしたリスクも引き受けて製作や興行などに携わる人々の覚悟や苦労を、今さらではあるが思わずにいられない。
前置きが長くなったが、シリーズを観続けてきたファンには、キャストの豪華さがかなり失われたこと、また連作を牽引してきたシルベスター・スタローンの出番も少ないことがさびしく感じられるのではないか。開発段階ではアーノルド・シュワルツェネッガーやジャン=クロード・ヴァン・ダムの再登板、また新顔としてピアース・ブロスナン、クリント・イーストウッド、ドウェイン・ジョンソンらの名前も挙がっていたが、コロナ禍による撮影スケジュール変更も影響してか、これら大物の出演はいずれも実現しなかった。タイのトニー・ジャーとインドネシアのイコ・ウワイスというアジア組の活躍は嬉しいポイントだが、ラスボスについても2作目のヴァン・ダムや3作目のメル・ギブソンに比べて本作の黒幕は若干小粒でアクションも物足りない。
開発と製作の過程でも紆余曲折あり、スタローンがいったん出演を取りやめたあとに復帰したり、ジェイソン・ステイサム演じるリー・クリスマスをメインにしたスピンオフ作品としてリリースすることを検討した段階もあったらしい。おそらくそうした途中のあれやこれやが脚本にも影響を及ぼし、行き当たりばったりでつぎはぎ感のあるストーリーになってしまった気がする。2020年代の現実世界の深刻な状況における娯楽活劇の存在意義を改めて考える契機にはなるだろうか。