キラー・オブ・シープ
1978年製作/81分/アメリカ
原題または英題:Killer of Sheep
スタッフ・キャスト
- 監督
- チャールズ・バーネット
- 製作
- チャールズ・バーネット
- 脚本
- チャールズ・バーネット
- 撮影
- チャールズ・バーネット
- 編集
- チャールズ・バーネット
-
ヘンリー・ゲイル・サンダース
-
ケイシー・ムーア
-
チャールズ・ブレイシー
-
アンジェラ・バーネット
-
ユージーン・チェリー
-
ジャック・ドラモンド
1978年製作/81分/アメリカ
原題または英題:Killer of Sheep
ヘンリー・ゲイル・サンダース
ケイシー・ムーア
チャールズ・ブレイシー
アンジェラ・バーネット
ユージーン・チェリー
ジャック・ドラモンド
チャールズ・バーネット上映会第2弾、10月1日開催 長編第3作「トゥ・スリープ・ウィズ・アンガー」を上映
2022年9月4日「アメリカで最も知られていない偉大な映画監督」チャールズ・バーネット監督の2作を日本初上映
2022年3月16日知られざるアメリカの黒人名監督と言われるチャールズ・バーネットの作品。70年代ロサンゼルスのワッツという街に暮らす黒人たちのささやかな営みを描いた作品で、確かに隠れた名作と言われるだけはある。どうして、これが知られざる名作になってしまったかというと、音楽の版権の問題が大きかったようだ。学生時代の卒業制作として作ったのでその辺は意識が甘い部分があったんだろう。
スラム街であるこの街の住民のほとんどが黒人で、60年代に起きた「ワッツ暴動」が起きた街として知られてしまっている。スラムを舞台にした作品だが、この作品はことさらにギャングが出てきたり、抗争などを取り上げているわけじゃない。むしろ、市井の人々のつつましい生活をリアリズムで撮り上げ、ささやかな幸せを噛み締める姿を捉えている。
往年のケン・ローチの映画のようなみずみずしさと人々を見つめる温かい視線を持った作品だった。ちょっと危ない遊びに興じる子どもたちの無邪気さと、タイトルの由来となっている、主人公一家の父親が従事する羊の屠処理がとても印象深い。
人間の生き様がわかり、力強く生きている美しい光景ばかりだ。スタンHenry G. Sanders は米国カルフォルニア州のロスのワッツ地区に家族と四人で住んでいる。仕事は羊の屠殺場で羊を屠殺場に追い入れて、死に追いやり、ベルトコンベヤーにひもでつないで、喉を切り、血を流さしている。後で、それらの内側の部分を捨てる。このようになんでもこなすようだ。1972 年と 1973年に映したフィル
ムであるというから、どうみても、物で満たされ満足できるような生活をしていた時代ではない。でも、生活できなく困っていて、生活保護を受けてはいない。スタンがはっきり、友達の前でも明言している。
『自分は貧しくない。なぜかというと、自分のものをサルベーション・アーミーに寄付できる。貧しかったらそんなことはできない。自分達はそんなに持ってはいないけど』と。 いいシーンだ。
彼は不眠症で、毎日元気がないし、仕事が終わって家に帰れば、台所の排水を直さなければならないし、厚いビニールを力を入れて切らなければならない(理由は?)。それに、子供もいるからねえ。息子のスタン・ジュニアーJack Drummond は父親の観点からはいうことを聞かない悪がきのようだし、砂糖をどっさり入れて、シリアルをほうばっているし。
スタンは美しい奥様Kaycee Moore のメイキャップやファッションには到底、興味がないどころか、目にも入らないようである。せっかく、ムードを出して、ダンスをThis Bitter Earth(Dinah Washington )に合わせて踊っているが。。。二人はこれからと期待させるような雰囲気だが、いやいや...スタン?!
それに、彼はかなりモテるようで、チェックを現金に変えてくれるコンビニのような店では『働かない?』と腕を握られ声をかけられる。また、悪の誘惑にも。二人の男がスタンを犯罪に巻き込もうとしているが、奥さんは彼らを罵って追い出す。逞しいねえ。
近所の子供たちの姿にはたくさんの方がコメントを書いているようだからあまり書かないが、石でもなんでもあるもので路地で遊んでいるところが、スマホのない時代の子供。2 人の大きな男子が盗まれたテレビを持って裏のフェンスをよじ登るのを見つめているのがなんとも言えない。悪い見本を見ながら育っちゃうね。あはは!
米国シカゴの精肉業界を描く、アップトン・シンクレア(Upton Sinclair、)の小説『密林』The Jungleを思い出したが。。。
「キラー・オブ・シープ」の映画はなかなか変えることができない人生を家族、友達、仕事場などの環境を通して描いていると思う。悪くも良くもならず、現状維持が精一杯を。でも、周りに与える心も忘れない。
あと、ロスは第二次大戦中、戦争に駆り出された人々の代わりにジョージア州など南部から黒人の多くが第二次産業を支えるため流入してきたと読んだことがある。それに、日本人・日系人強制収容所に入った人々のためにも南部からの黒人が労働力になったようだ。 (間違っていたらご指摘を)
好きだった曲
This Bitter Earth [Dinah Washington]
Elmore James - I Believe
"The House I Live In" (Paul Robeson)
≪This is Charles Burnett/チャールズ・バーネット セレクション vol.1≫
何かが起こる出来事や解決する物語があるわけでは無いけれど主人公の淡々としながらもがき苦しむ姿に暗い影がありながら、都市部のゲットーに暮らす子供たちが遊んでいる姿を長尺に映す映像にドキュメンタリーの要素が効果的で全体的に無邪気なイメージが心地良く。
フランソワ・トリュフォー監督作『トリュフォーの思春期』の子供たちを思い出しながらこの作品には子供の権利向上など、チャールズ・バーネットが描く子供たちは大人になった時の将来像すら見えてこない。
羊の解体シーンは思いのほかグロくて、車のエンジンは思った通りの結末で笑えてしまう割に呆気なく。
ヒップホップ前夜、ソウルミュージックが流行の時代にジャズやブルース、オールディーズの音楽が印象的に流れるセンスが良い。
ユーロライブにて鑑賞。