劇場公開日 2022年9月9日

  • 予告編を見る

「タイトルの皮肉さ。」LOVE LIFE talkieさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0タイトルの皮肉さ。

2024年10月25日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

<映画のことば>
ぶたれたとき、理不尽だと思った。
でも、敬太が死んだことを誰かが怒るべきだった。
こんなに悲惨なことが起きたのに、敬太のいない世界に、みんなが慣れようとしていた。
でも、あなたは違った。
先(ま)ず怒ってくれた。

最愛の夫・パクに突然に去られて(失踪されて)、さぞかし妙子は落胆し、往時は絶望の淵をさ迷ったことでしょう。
その境遇で彼女にできたことは、最愛の夫・パクとの間に授かった一人息子の敬太を大切に育てることー。
たぶん、当時すでに二郎と付き合っていた山崎をいわば蹴落とすかのような格好で射止め、そして、再婚で連れ子のいた妙子との結婚に反対する二郎の両親の反対を押しきって、妙子が二郎との生活を手に入れたのも、ただただ、敬太との生活の安定のためだった…と断じたら、それは、言い過ぎでしょうか。

そんな中で、上掲の映画のことばは、妙子が敬太の死を所与の事実として受け入れたことの証(あかし)として、重要な位置を占めるのではないかと思います。
妙子の心情の、まずは第一段階として「半歩は前に進んだ」ことの証として。

しかし、そもそも、ある意味では「無理をして」手に入れた二郎との生活だっただけに、義父には「中古品」呼ばわりはされるうえに、義母も、とりなしはするものの、そういう義父を強くは咎(とが)めないし、敬太の遺体の取扱いについても難色を示したりする―。
そんな中で、二郎自身も、親の引越しを機会に元カノの山崎に傾きかける。

語弊を恐れずにざっくりと言い切ってしまえば、決して親身とは言えない態度の二郎と、単に「こぶ付の嫁のこぶがとれただけ」程度にしか受け止めてはいないふうの義父と義母という境遇の中で、敬太との生活の幸せ(安定)を図ろうと苦しみ、もがく妙子の姿は、胸に突き刺さるようにも思われます。

ただ敬太との幸せな生活が欲しかっただけの妙子の心情には、「LOVE LIFE」という本作のタイトルが、いかに皮肉に映るのか。

そう考えてみると、なんとも切ないとしか、言いようがないように思われます。
評論子には。

深田晃司監督の作品は、どれも人の心に潜んでいる深くて、暗い情念というのか、心の襞(ひだ)とでもいうのか、そういうものを描くことが多く、それゆえに観終わってスッキリと爽やかという系譜の作品群ではないと思いますけれども。

本作も、いかにも深田晃司監督らしい、深い人間観察による一本としては、評論子が入っている映画サークルが年間ベストテンに選び出したことも、理由がなくはないと、納得のいく作品でもありました。

佳作でもあったと思います。
評論子も。

(追記)
敬太亡き後も、妙子は二郎の下に自分の「居場所」を見出すことができたのでしょうか。

パクの息子の結婚式では、突然の雨に参会者たちが右往左往する中、自分も場に溶け込み、あたかも参会者の一員であるかのようにオッパーダンスに興じていた妙子ではありますけれども。

また、元妻には追い払われそうになったものの、父親としてのパクは、息子の結婚式に出席することができて、本懐を遂げたのではないかとは思うのですけれども。
そして、彼が韓国への渡航前に二郎に愛猫を託したのは、妙子との訣別の意思表示だったのだろうとも思
いますけれども。

そんな状況下で、このあと、パクと妙子は、それぞれ、どこに自分自身の「居場所」を定位することになるのでしょうか。

それらの点でも、余韻の深い一本だったと思います。

talkie
talkieさんのコメント
2024年10月30日

トミーさん、コメントありがとうございました。
確かに良い作品なのですけど、深田監督の作品は重たいものばかりなので、連続鑑賞には腰が引けます(笑)。
他の作品を観て脳内エネルギーが回復したら、また次の深田作品にトライしたいと思っています。

talkie
トミーさんのコメント
2024年10月27日

共感ありがとうございます。
息子の事故ショックが観ている方も打ちのめす、深田監督作品は最初に嫌なモノ、打撃を与える展開が多い気がします。最後の方、しょうがないなぁ、生きていくって事は・・でいつも終わるのも。

トミー
talkieさんのコメント
2024年10月26日

りかさん、コメントありがとうございます。
パクのダメ男ぶりが、妙子の母性本能を刺激したのでしょうか(笑)。
登場人物との人間関係は、確かに複雑怪奇で「?」な面も多々ですが、そこが深田監督の思想・思索の反映なのかも知れませんね。

talkie
りかさんのコメント
2024年10月25日

こんばんは、共感ありがとうございます😊
しかし、私は本作チグハグや無理矢理などが盛りだくさんで気持ちが入ることができませんでした。
パクのどこに魅力あったのか全くわかりませんでした。

りか