「疲れ果てた」LOVE LIFE andhyphenさんの映画レビュー(感想・評価)
疲れ果てた
映画というのは大体観たら疲れるものだが、この作品は心底ぐったりした。これまで観た深田監督作品の中でもダントツで疲れ果てた。
「幸せ」に潜む痛みと、突然の喪失と、人間が皆持つ「正しくなさ」。エゴ、と表現するにはあまりにも広くて深いもの。
人間だれしも邪な気持ちを持って生きているものだと思うし、それをそっと見ないふりをして平穏に暮らそうとしている。でもこの作品はそれを次々と突きつけてくる。
耳が聴こえない元夫と目を合わせない現夫。「この人は弱いから私がいないと」に潜む依存性。
全てを曝け出すことが正しいとは到底思えない。でも、じゃあ、ひととひととが分かりあうってどういうことなんだろうか。多分根源では絶対分かり合えないけど、分かろうとする努力が人間関係なのかもしれない。
ラスト、あそこでタイトル持ってくるのは美しいと感じた。
しかし、自分自身は矢野顕子の「LOVE LIFE」を聴いても歌詞を見ても、どうやったらこの物語は生まれるのか分からない。深田晃司という人は心底怖い、と思った。こんなに人間の深いところを考えて物語を紡ぐというのは…観ているこちらがこんなに消耗するものを、作り手はどういう心で作るのだろうか。人を分かろうとする試みは、とても尊く、とても残酷で怖しい。
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