「ラブライフのラブとは....」LOVE LIFE レントさんの映画レビュー(感想・評価)
ラブライフのラブとは....
キリスト教でいうアガペーは神が人間に対して与える無償の愛のこと。本作の主人公妙子がパクに対してこのアガペーのように無償の愛をささげているように見える。
パクは聾啞だが、どうしようもない人間だ。妻と幼い子を残して蒸発し、息子の死を知ってひょっこり帰ってくる。たとえ聾啞というハンディを背負っていても家族をほっぽり出して逃げ出す無責任な人間、ましてや彼は母国でも同じことを繰り返している。そんな彼であっても妙子は彼のために尽くそうとする。これはアガペーなのだろうか。
夫二郎も妻妙子からひどい仕打ちを受けてもけして彼女を突き放そうとはしない。これもアガペーなのだろうか。
アガペーは見返りを求めない愛、つまり地位が高いものが下の者に情けをくれてやるようなもの。
同じ人間同士でアガペーなどあり得ない。一見、どうしようもない弱者に対して情けから愛をそそぐ行為。しかし、それは愛をそそぐ側にも見返りがあるのだ。相手を救う行為で自らも救われているのだから。
例えばボランティアは一見無償の愛に見える。しかし、そうすることにより自分が社会に役立つ人間だと自己満足に浸れるという見返りを得られることと同じである。
自分を裏切ったパクを思いやる妙子、あれ程尽くした妻からの仕打ちに対しても受け入れようとする二郎。
愛するということは生半可なことではない。また、その形も様々だ。本作のラストシーンがまさにすべてを物語っていた。
本作は子役にいたるまで役者の演技が素晴らしく、演出も言わずもがな。日本映画の中ではかなりハイレベルの作品。監督の過去作品も見なければ。
今晩は
アガペー。成程。
言葉は違えど、私はこの作品は過去の様々な柵を”赦す”過程を描いた作品だと思いました。
故に、矢野顕子さんの坂本龍一さんとの夫婦関係がおかしくなってきた時期に公開された優しき歌声と素晴らしき詞に彩られた”Love LIfe"が心に響いた作品でしたね。では。
(私は全ての女性は菩薩であると思っており、家人に対してもそのように接している積りですが、矢野さんの菩薩パワーは凄いと思っています・・。)