「「LOVE LIFE」って曲、矢野顕子だったんだ。この夫婦の場合はかなり特殊なケースだとは思うけど、“人生こういうことってあるよな”と思わされるところはある。秀作とは言えないまでも佳作。」LOVE LIFE もーさんさんの映画レビュー(感想・評価)
「LOVE LIFE」って曲、矢野顕子だったんだ。この夫婦の場合はかなり特殊なケースだとは思うけど、“人生こういうことってあるよな”と思わされるところはある。秀作とは言えないまでも佳作。
①“90年代のヒット曲です”とラジオから流れてきたけど「知らねえぞ、でも声は聴き馴染みはあるなァ、誰だろう」と思っていたら矢野顕子でした。②ごく初めの方で子供が死んでしまうから、此れは重たい話かな、と思ったけれども、少し違って何とも不思議な感触の映画。③『よこがお』はヒロインにどうしても感情移入出来なかったが、本作では妻の妙子の気持ちも夫の二郎の気持ちも理解できる範囲内である。しかし、何と言ってもパクの存在が秀逸。④先ずは、敬太の葬儀に闖入、この時点で妙子の前の夫で敬太の父であることは察しがつくが、いきなり妙子にビンタ(お前に妙子何故かに怒る資格ねえだろ、と反感)し、その後何故か「おうっ、おうっ」と変な嗚咽をした後飛び出して行って“なんや、あのオッサン?”と思わせる。⑤その後、聾唖者(「おうっ、おうっ」という泣き声にも納得)でかつ韓国籍の韓国人と日本人とのハーフとわかり一気に心の振り子は同情に振れる(我ながら単純)。妙子の“あなたのことは絶対に許せないけれど、誰もが気遣って何も言わず、敬太の死を早く過去の事にしようとしているなか、あなただけが怒ってくれて嬉しかった”という台詞が更に後押し(この台詞はとてもリアル)。それまで涙を見せなかった妙子がパクに叩かれた後はじめて号泣したのもこの台詞で納得がいく。⑥いつも暗い顔をして無愛想な妙子だけれども根は困った人をほっておけない性格なんだろうね(私がいなければ、という変に頑固な一途さと正義感もあるようだし)。元夫で家出した時は必死で捜した(二郎の言)くらいだから、やはりほってはおけず空き家になった義理の両親の家に済ませるくらい(二郎に相談せずにするのは流石に如何かと思うが)。それを見つけて怒鳴り込んだ後の二郎の独白(パクさん耳聞聴こえないから)も夫の気持ちと観客の気持ちとを代弁していて永山絢斗好演。“でもね、二郎君、パクさん耳聴こえないし、日本で暮らすの大変だから許してやろうよ”とこちらも甘くなって声をかけたくなる。“あんたも気の迷いで元カノにキスするくらいだしさあ。”と。永山絢斗、『ふがいない僕は空を見た』(原作大好きです)の時は如何にも高校生だったのに大人になりましたねェ。⑦で、韓国にいる父親が帰国なので韓国に帰りたいから旅費を貸して欲しい、とパクさん。フェリーの港まで送りに行ったら“あたし、やっぱりあの人を一人にしておけない”と過去の愛情が蘇ったのか、同情や正義感なら夫を置いていくのは行き過ぎだよなァと思いつつ、この夫婦此れで終わりかと心配していたら・・・⑧で、パクさん、韓国にいる父親が危篤だからと韓国までの旅費を貸して欲しいと妙子達にねだる。フェリー乗り場まで送りに行ったら、妙子さん、“私、やっぱりあの人を一人にしておけない”と爆弾発言のうえパクさんと韓国までついて行ってしまう。愛情が蘇ったのか、同情心や正義感からなら夫を置いていくのはちょっとどうだろう、この夫婦此れで終わりかと心配していたら・・・。⑧韓国に着いた途端、パクさんが二郎が言ったとおり、本当に勝手過ぎる男だったことが判明。結婚式で韓国にいたチマチョゴリを着た女の人(前の前の妻?親戚のおばさん?)に飛び蹴り喰らうのもわかるわ。もう一人の息子の結婚式に出たい為に父親が危篤だと嘘をつくは、韓国でも妻子を置いて失踪していたは、一人の息子を亡くしたからもう一人の息子に会いたくなったは、結婚式に呼ばれたら20年ぶりなど何のそのホイホイでかけていくは、身勝手のし放題じゃないですか。しかも、旅費を出してくれて韓国までついてきてくれた(パクさんにしてはありがた迷惑だっただろうけど)妙子を雨の中に置き去りにして自分だけ雨宿りに行くは、何ともはや泣くにも泣けず、笑うにも笑えない。⑨でも、こういう人って実生活にもいるよね。本作では聾唖者ということで目隠しされちゃったけど、本人に悪気はないけれども周りを振り回す人(男女を問わず)。私の周りにも振り回されたひとが何人もいるし、私も一度か二度は振り回された(私は振り回してはいないと思うけど、多分...)ホント、泣くにも泣けず笑うにも笑えず(まあ苦笑いくらいはするかな)。⑩さて、この夫婦、今後どうなるのだろう。私は元の鞘に戻るような気がする。「おかえり」と言った妙子に対して「おかえり」で返した二郎。そして「ただいま」と返した妙子。人生いろいろあるよね。でも愛しいから『LOVE LIFE』?