「君は敬太の死を乗り越える必要はない。敬太のことを忘れてはいけない。君の人生にとって大事なことだから。」LOVE LIFE 栗太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
君は敬太の死を乗り越える必要はない。敬太のことを忘れてはいけない。君の人生にとって大事なことだから。
深すぎて意味不明のエンディング。だけど、こういう観客を試すラストは嫌いじゃない。なぜなら、その後もじっくりと味わえるから。あれはどういう意味か、あのあとどうなるのか、そんな放置がごろごろしているけれど、それは日常だって同じだ。隣の家族、自分の親兄弟、どんな過去を抱え、どんな気持ちで暮らし、どんな秘密を隠して生きているのだろう。つい、そう振り返ってしまう。
はじめから、なにか良からぬことが起きそうな空気に満ちていた。そして、事件の起こったあとも、まだまだ何かが潜んでいるように怯えてしまっていた。その警戒は杞憂に終わったようにも見えるし、波乱の人生がリスタートしたとも見える。それは、当人同士でしかわかり得ないことかもしれない。
とにかく、不穏。慎ましげに見える奥に潜む闇。なのになぜだろう、嫌悪感は薄い。それは、妙子の性根が善人だからだろうか。しょせん、庶民に起こる程度のさざ波だからだろうか。
それにしても、元夫役の砂田アトム、いい役者をつかったものだ。誰だ?と思って検索すると、そこには全く別人にしか見えない本人の動画がいくつか上がっていた。そして思う。あの演技はニワカ仕込みではないのだろうなと。映画に深みを添えていたのは、この役者の人間味なのかもしれない。
ふと感じるのは、「怒り」の感情の根源には「愛」があるということ。愛があるから、怒りが湧く。愛があるから、関わらざるをえない。そして「愛」がなくなってしまったとき、人は興味も薄れ、秘事のやましさも芽生え、「目を合わさなくなって」いくのだろう。