「割り切れないもの」LOVE LIFE Pocarisさんの映画レビュー(感想・評価)
割り切れないもの
割り切れないものをあえて描いています。
大げさな演技も、絶叫も、ダッシュも、刃傷沙汰も、「頭のおかしい人という設定でそれっぽく見せているだけ」の演技も、ついでに言えば肉体関係を伴う不倫も、どれもありませんが、全編が強い緊張感に包まれています。
登場人物が優しい人ばかりだとか寛容だとか、そういうことでもありません。
それどころか、何気ない一言が他者を鋭く傷つける様が何度か描かれるし、本当はそばにいるべき人が逃げ出すし、主人公がはっきり間違ったことをしてしまう様も描かれ、しかしそれ自体が、たしかに人生にはそういうこともあるかもしれないというリアルさを醸し出します。
人間関係がそもそも持っているスリリングさを描き出しているといえばいいでしょうか。
しかしそれがほのかな希望につながるように描いています。
それと、手話をつかう聾者役を、きちんと当事者キャスティングしたところも高く評価できるところです(なぜ聾者は聾者の俳優がやらないとダメかはパンフレットを見てください。手話は言語であって、ジェスチャーではありません)。
今年ベスト級の一本となりました。
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