「ミオの目的から逆算して欲しい」かがみの孤城 よしさんの映画レビュー(感想・評価)
ミオの目的から逆算して欲しい
いじめから不登校になった少女が、孤島にある城に迷い込み、同じような境遇の少年少女と交流を深め成長する物語。
辻村深月のベストセラーが原作のアニメ映画ですね。原作未読です。
それ程期待しての鑑賞ではありませんでしたが、後半から終盤に向かうにつれ話に引き込まれていく、佳作でした。
物語の軸は3本。
現実社会の虐め。理不尽な虐めに苦しむ主人公。虐めのリアルな描写、事なかれ主義で対応出来ない教師。逃げ場のない少女の心情を思うと心が苦しくなります。
もう1本は孤城での触れ合い。戸惑いながらも交流し、親睦を深める少年少女たち。徐々に信頼感を深めていく彼等に、心が暖かくなります。
そして3本目は、謎解き。孤城とは何か、孤城の秘密とは・・・がラストに向けて物語を盛り上げます。
全体を通して、上記の3本が丁寧にまとめられていて、とても観やすい映画になっているように感じました。
ただ、良く観ていると、設定に矛盾が多くあり、納得感がないのも事実です。
例えば、ミオ(オオカミさま)の目的。彼女の目的は何なのでしょうか?病魔に倒れ中学校に通えなかった彼女が、「学校に行きたくても行けない子供達」を救う・・・という目的を持ったのでしょうか?なら、その目的はどのように達成させるつもりだったのでしょうか?孤城での交流で前向きになれるのでしょうか?でも、それなら、記憶をなくす設定は矛盾を感じます。そもそも、現実社会でもフリースクールがあるわけで、孤城である必要はありません。
それに、「病気」でいけなかったミオが、不登校の子たちだけを集める理由もわかりません。42年もの間から集められた子供たちです。その間に「病気」で通えなかった子ともが1人もいないとは思えません。
問題なのは、結局、子供たち全員を救い出せていないことです。少なくとも、孤城の生活でその為の具体的な行動が見られていないことです。
例えば、アキを導き、カウンセラーとして成長させることで以降の子供たちを救い出す・・・そんな設定なら良いかもしれません。しかし、アキは最年長ではありませんでしたし、劇中でそのような伏線もありませんでした。
7年毎なのは、ミオとリオンの年齢差なんでしょうか?
留学していたリオンが選ばれたのは、本来通学するべき雪科第五中に通えていない・・・という理由なのでしょうか?
でも、同じ年度のこころとリオンが選ばれた理由は分かりません。劇中では、「こころとリオンを引き合わせる為」というセリフがありましたが、リオンは兎も角、なぜこころに対して特別な関心を持っていたのか腑に落ちません。
例えば、ミオが死亡した後に傷心の家族が引越し、そこにここあ家族が引っ越してきて・・・そこに孤城の模型が残っていた・・・なんて設定なら納得するかもしれません。しかし、そんな理由付けがされていないと、この展開は辻褄があいません。
全体として面白い作品ではありましたが、不満な点は山のように残り、私的評価は普通にしました。