「故人のために奮闘する型破りな男」アイ・アム まきもと みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
故人のために奮闘する型破りな男
本作は、イギリス・イタリア合作映画「おみおくりの作法」のリメイクである。孤独死した故人を弔うために奮闘する型破りの市役所職員の姿を描いたコメディ風味の人間ドラマである。感動的なラストシーンが強く心に刻まれる良作である。
本作の主人公は、市役所のおみおくり係・牧本(阿部サダヲ)。彼は、孤独死した故人を想うあまり、縁者を探し、自費で葬儀を執り行うという型破りな行動で組織から浮いていた。新任局長は、そんな牧本の出過ぎた行動を嫌い、おみおくり係の廃止を決める。牧本は、おみおくり係の最後の仕事となった孤独死した老人・蕪木(宇崎竜童)の縁者探しに奔走する・・・。
型破りで察しが悪いという個性的な牧本を阿部サダヲが優しさ溢れる演技で巧演している。どんな役柄も、らしさを発揮して熟すのは流石。
牧本は、故人を弔うためには、故人の縁者に葬儀に参列してもらうことが最良だと考えている。彼の行動は、縁者のためではない。故人のためである。故人を安らかに弔うためである。
牧本の粘り強い蕪木の縁者探しは、ミステリーのようであり、蕪木の意外な人生、意外な人物像を浮き彫りにしていく。そして、縁者に辿り着いていく。孤独死をする人でも、その人生には多くの人達との繋がりがある。人は人との繋がりの中で生きている。故に、牧本は、故人を弔うために、繫がりの強かった人達を探していることが得心できる。
終盤の展開は意外ではあるが、中盤までの横断歩道を渡る時の牧本の挙動の繰り返し描写。さらに、牧本の天職であったおみおくり係での最後の仕事は、彼の集大成であり花道である。その後は?と考えれば彼の運命は推察できる。推察できてもなお涙を誘う。
ラストシーンは感動的である。牧本の周りに集う故人たちの彼への感謝の気持ちがスクリーンから静かに伝わってくる。
本作は、死を扱ってはいるが、作風が重くならず観終わって心癒されて劇場を後にすることができる作品である。
みかずき様
超お久しぶりです。お邪魔します。
今作、みかずきさんが書かれているとおりの作品でしたね。
>彼の行動は、縁者のためではない。故人のためである。
その通りでしたね。人は死んじゃったら終わりと思いますが、その故人のためにあそこまでやっている牧本という人物像がとてもユニークであり、気付かされるところがありました。気付かされるのは、最後まで観てからでしたが(笑)。
>終盤の展開は意外ではあるが、中盤までの横断歩道を渡る時の牧本の挙動の繰り返し描写。
この展開は全く予想してなかっただけに、驚きました。でも、この「繰り返し描写」が効いてますよね!
>ラストシーンは感動的である。牧本の周りに集う故人たちの彼への感謝の気持ちがスクリーンから静かに伝わってくる。
いや~、感動しました。正直なところ、大部分は「ふ~ん」って傍観していたとろこもあったのですが、それらがすべてこのラストシーンで回収されたように感じました。「故人のため」の鮮やかなドラマでした!
赤ヒゲでした。
みかずきさん、コメントありがとうございます。
ケータイ充電器については、食品加工会社で写真をずっと見ていたシーンで、電池切れするんじゃないかとヒヤヒヤさせられたとき、ふと最初のシーンを思い出しました。
牧本は人との付き合いが上手くないけど、洞察力・推理力や計画性はけっこう持ってるんだなぁと感心したほどです。
横断歩道のカットは巧い演出。毎回ハラハラさせられました・・・