劇場公開日 2022年5月13日

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「映像の美しさと、視覚障害支援技術の発達に驚く一作。」二つの光 yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0映像の美しさと、視覚障害支援技術の発達に驚く一作。

2022年8月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

約30分の短編映画だけど、終始映像の美しさに魅せられたひとときでした。2時間を超える長尺の作品が増える中で、本作のようにテーマを絞り込んだ短・中編の劇場公開作品ももっと増えても良いのでは、と感じました。

主人公のスヨン(ハン・ジミン)、インス(パク・ヒョンシク)をはじめとして、主要な登場人物の多くが視覚に何らかの障害を持つ人々で、彼らが所属する写真サークルでのやりとりが綴られます。恥ずかしながら、視覚が不自由な方や失明された方がどのように写真を撮影したり、それを鑑賞したりするのか、本作を観る前は想像がつかなかったので、作中彼らが撮影を楽しみ、作品の感想を聞いて嬉しそうにしている様子を見て、自らの見識の狭さを少し恥ずかしく思うほどでした。なるほど、写真という表現芸術は、視覚にだけに依存する創作活動ではなく、自ら動き、感じ、味わう活動なんですね。

また本作では視覚障害の支援機器として特殊なVRゴーグルが登場しますが、このような技術が発達していることも本作で初めて知りました。そもそもホ・ジノ監督が本作を手がけるようになったきっかけも、VR技術を用いて視力を補正した方の体験談に触れたためだそうです。一方で、新技術の称揚一辺倒ではなく、視覚に依らず構築してきた個々人のイメージ、世界観も、「見えること」に劣らず重要である事もさりげなく示唆しているところも絶妙なバランス感覚だと感じました。

映像的な美しさは特筆に価するもので、その美しさは主に逆光の巧みな活用に負う部分が大きいのですが、これがやりすぎちゃうと良くできたCGに見えてしまうと言う不思議。本作はその「やりすぎ」をぎりぎり回避した絵作りであると感じました。

yui