「手続き記憶」今夜、世界からこの恋が消えても 唐揚げさんの映画レビュー(感想・評価)
手続き記憶
将来に希望を持てない文学少年の神谷透。
彼はとある事情からクラスの人気者の日野真織に告白する。
そんな彼女も実は人知れずある病に苦しんでいた。
互いが互いを埋め合うように、擬似恋人として始まったその恋はいつしか本当の恋心へと変わっていく。
今年の大本命、やっと観れた。
最近の邦画はこんなのばっかりだという公開前の意見を見て以来、絶対面白いと信じてきたこの作品。
だってこのキャストとスタッフの面々でハズレなわけないじゃないですか。
たとえハズレだったとしても、三木監督の撮る福本莉子が見れるというだけで意義があると意気込んで劇場へ。
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はい、満点だよ。ざまあみや…以下略
どんだけ泣かせんねんこの映画。
もう、今年のベスト3は上半期の分で堅いと思ってたのに…
難病、擬似恋人、デート、写真、絵、水族館、家庭問題、花火、死、日記。
設定や展開は擦りに擦られたベッタベタなものなんだけど寧ろそれが見たいわけだし、それをしっかり魅せられるものとして見せられるっていうのは完全に制作陣の手腕のおかげ。
特に花火のシーンなんか本当に職人技。
演者の演技、セリフまわし、カット、音楽との親和性。
神々しかった。
福本莉子はもう立派な三木孝浩映画のミューズだね。
透明感とかいうのも憚られるくらいいい意味で浮いてた。
道枝くんも言語化できないけどなんか良いよね。
ドラマでも映画でもいいので、この2人であと100本は観たい。
で、脇の役者も良かったわけだけど、やっぱり外せないのが古川琴音。
涙腺共有してるのかっていうくらい彼女の泣きの演技につられる。
日記改ざんの時のあの目つきが忘れられない。
なんかもう、はい、良いんです。
とにかく三木監督は役者の魅力を存分に引き出すのが上手すぎる。
メインキャラクターを誰1人として取り残さないし、登場人物を絞ることで2人の物語によりフォーカスされて心情描写が繊細になる。
観る前はあまり思わなかったけれど、令和版キミスイだった。
真織は桜良であり春樹だし、透も春樹であり桜良。
絶望の中に希望の光があり、決して死をゴールにせずそこから始まるスタート。
記憶の中でずっと生き続けてるなんてよく言うけど、間違いなく彼は真織の目の前に今も存在してる。
形として残りたいという気持ちは昔からあった。
でも、
記録の中よりも記憶の中で生き続ける。
そういう者にわたしはなりたい。
そう感じた。