「ゆるカッコいいクレイグ観賞用ゆるコメディ、とミステリ」ナイブズ・アウト グラス・オニオン ニコさんの映画レビュー(感想・評価)
ゆるカッコいいクレイグ観賞用ゆるコメディ、とミステリ
007シリーズによってすっかり隙のないイメージがついたダニエル・クレイグが頑張っておとぼけをやってくれるこのシリーズ、私はなかなか好きだ。
今回は美しいギリシャの離島の広大な屋敷を舞台に、誰が犯人でもおかしくない面子を集めての離島ミステリ。といってもミステリの仕掛け自体は驚くようなものでもないのだが、豪勢な屋敷での贅沢なバカンスに豪華なカメオ出演、ゆるい小ネタで気楽に楽しめる。
ヨーヨー・マやセリーナ・ウィリアムズの登場もサプライズだったが、個人的にはブノワの同居人として登場したヒュー・グラントに驚いた。あっブノワはゲイなのか、ダニエル・クレイグとヒュー・グラントのカップルって最強過ぎない?!と瞬間的にテンションが上がる(ヒューの出番はその一瞬だけ……残念)。イーサン・ホークは初見では分からなかった。
ジャレッド・レトとジェレミー・レナーが名前だけ出されていじられたのはくすりとした。ハード・コンブチャって何やねん。当然昆布茶のことだろうと思って見ていたが、実際は発酵飲料(紅茶キノコ)のことらしい。名称の語源は日本の昆布茶がルーツらしいが、現物は全くの別物。これにアルコールを足したものがハード・コンブチャ。
いつまでも若々しいジャレッド・レトと健康と若さのためのコンブチャの組み合わせが笑いどころ、らしい(コンブチャが分からなかったのでピンとこなかったけど……)。
ジェレミー・レナーのホットソースがまあまあ重要アイテムになっていたのも生ぬるく笑える。どういう主旨のイジりか分からず何だかシュールだった。
エドワード・ノートンはああいう、ちょっとサイコパス入ったキャラが上手い。イーロン・マスクを連想させる。マイルズの家の時報の音と、彼がそれに自分でビビっていたのに笑ってしまった。
物語の構成は、アンディが銃撃されるまでの表向きの流れの後、長い回想で裏事情の種明かしをする作り。リアリティ面では無理がある箇所も散見されるが、それはこの手の作風の話においてはご愛嬌だ。
ラストは、ミステリの謎が解けた爽快感はあまりなくて、破壊のカタルシスばかりが目立ってしまったような気がする。きちんとしたミステリを求める人には不評を買うのではとちょっと心配になった。私は突飛な展開も好きなので、もっとやれー!と思えたが。
ゆるカッコいいダニエル・クレイグと豪華なキャスト・映像を気楽に楽しみたいという私の期待は大いに満たされたので個人的には満足。あのゴージャスな舞台を映画館で観たかった、それだけが残念。