劇場公開日 2024年12月6日

「シニア世代にこそ見てほしい、感動と勇気をくれる最高の映画」ホワイトバード はじまりのワンダー ノンタさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5シニア世代にこそ見てほしい、感動と勇気をくれる最高の映画

2024年12月9日
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本作は、前作『ワンダー 君は太陽』のいじめっ子だったジュリアンが、祖母サラの語る物語を通じて変化していく物語です。この映画は、単なる過去の回想録にとどまらず、世代を超えたつながりと、個人の成長がどのように次の世代に影響を与えるかを問いかけてきます。

物語の軸は、第二次世界大戦中のナチス占領下フランスで、ユダヤ人の少女が命を懸けて生き抜いた回想です。この歴史的な背景を基に、祖母の語りが現代の孫に新たな希望を与える形になっています。

若い世代にとって、この映画は「いじめの結果が自分に返ってくる可能性」や、「人とつながり、積極的に生きることの価値」を伝えます。一方で、私のようなシニア世代には、「成長や成果を追求する人生」から、「次の世代に何を伝え、どのように振る舞うべきかを考える人生」への転換を促してくれました。

特に印象的だったのは、祖母が孫の前に現れるタイミングの絶妙さです。彼女は、ただ思い出話をするのではなく、孫がそれを本当に必要とする瞬間を待って話し始めます。この「時を待つ姿勢」と「信頼される関係性」は、私自身がこれから若い世代とどう関わるべきかを考えるうえで、大きなヒントとなりました。

また、映画を観ながら感じたのは、次の世代に何かを伝えるには、必ずしも実績や成果だけが必要ではないということです。必要なのは、相手が自分に寄せる信頼と、必要なときに寄り添える存在であること。祖母の物語は、私に「まだできることがある」という勇気を与えてくれました。

感動のシーンも多いですが、胸を打たれたのは、美術館で祖母が最後に語る言葉です。そのメッセージには人類への希望と愛が詰まっており、「自分も誰かに何かを伝えたい」と心から思わせる力がありました。

ただ、公開2日目で映画館が空いていたのは、本当に残念。前作の印象もあり、若い人向けの映画に見えるかもしれませんが、実は40代、50代以上の方々、特に「中年の危機」を感じていたり、職場で居場所を失ったり、若い世代とうまく接することができないと悩んでいる方々にこそ観ていただきたい映画です。この作品が多くの人に届くことを願っています。

ノンタ