「辛気臭い人間ドラマと突飛な月誕生説」ムーンフォール odeonzaさんの映画レビュー(感想・評価)
辛気臭い人間ドラマと突飛な月誕生説
エメリッヒ監督と言えば破壊王ですからディザスター・シーンはそれなりに魅せてくれますが登場人物のテイストの変わり方はちと腑に落ちません。
インディペンデンス・デイなど大統領が活躍するといった象徴主義から一転、誰にも相手にされない天文マニア、挫折した宇宙飛行士などおよそかってのヒーローのイメージを覆しています。
SFでは異端の科学者が活躍するのが相場ですがここまでダメ親父風に描くのはどうなんでしょう、ラストとのギャップ萌え狙いなのでしょうかね。
レッテルで人を見るなよと言うのは正論ですしヒューマンドラマは離婚の多いアメリカらしく親子関係の存続が難しいのはわかりますが辛気臭い。
電子機器が使えない設定にして博物館のスペース・シャトルを復活させるのですがNASAの黄金期、アメリカの栄光の時代を彷彿とさせるノスタルジーでしょう。イーロン・マスクのスペースXや中国の協力が出てくるのも時代を感じさせます。(制作費ねん出事情なのでしょうかね)
ナチスが月から攻めてくる映画(アイアンスカイ)もありましたから妄想は歓迎ですが月はエイリアンが創った人工物というのは引っ掛かります、月の誕生には諸説あったものの今では原始地球へのジャイアントインパクト説が定説なので子供でも騙せませんね。
予算がたっぷり(1億5千万ドル)もあるのだからB級とは呼べないがプロットは安手のホームドラマに思えてしまう。少なくとも前半の1時間はかったるい。余計な人間ドラマを過ぎ落としてかってのエメリッヒ監督らしいテンポのよいディザスター・ムービーを観たかった・・。