「スクリーンで観たいスケール感だが、この内容なら配信スルーも仕方ないか…」ムーンフォール 高森 郁哉さんの映画レビュー(感想・評価)
スクリーンで観たいスケール感だが、この内容なら配信スルーも仕方ないか…
ローランド・エメリッヒ監督作をタイプ分けすると、異星人や怪獣など地球を危機に陥れる未知の存在との戦いを描くSF娯楽活劇(「インデペンデンス・デイ」「GODZILLA」)と、人類滅亡につながりかねない天変地異を描くディザスター(大災害)ムービー(「デイ・アフター・トゥモロー」「2012」)という2つの大きな系統があるが、「ムーンフォール」はこの2系統を組み合わせたストーリー展開となっている。
2021年、月の公転軌道が内側にずれたことが観測され、数週間かけて地球との距離を狭めていき、最終的には月が地表に激突することが明らかになる。月の接近に伴う重力の変化によって津波や地震、地割れなどの大災害が頻発する中、かつて船外活動中に未知の物体に襲われた元宇宙飛行士ブライアン(パトリック・ウィルソン)が、元同僚で現NASA副長官のジョー(ハル・ベリー)、「月は巨大建造物」と主張する自称博士のKCとともに旧式のスペースシャトルで飛び立ち、月の軌道を元に戻す超難ミッションに臨む。
エメリッヒ監督作らしい視覚効果を駆使したド派手な場面は確かに盛りだくさんなのだが、地上でのディザスターシーンは2009年製作の「2012」からさして進歩していないようだし、月内部で回転儀の働きをする巨大構造物の描写などは「ウォッチメン」(これも2009年製作)で観たCG(うろ覚えだが、ドクター・マンハッタンが火星上に作った構造物だったような)に似ている気がするし、つまるところ、新味に乏しいのだ。このクオリティーで製作費が1億5000万ドルもかかっていることに驚くが、世界興収は6000万ドル弱にとどまっているようなので、まあ大コケの部類に入るだろう。映像のスケール感は大スクリーンで観るほうが楽しめるはずだが、ストーリー的にも深みに欠けるし、日本ではアマゾンのプライム・ビデオでの配信になってしまったのも仕方ないか。