「今のSNSへの風刺と、理想に貪欲な人とそれに依存する人が描かれた作品」ハッチング 孵化 Gyozaさんの映画レビュー(感想・評価)
今のSNSへの風刺と、理想に貪欲な人とそれに依存する人が描かれた作品
誰かも書いていたが、ジュリアデュクルノーのチタンというフランス映画と似ていた。
あの映画も、独特なロケ地で撮影されていたし、生まれるというキーワードは似ていた。あちらの家族も仲がそんなに良くなかった。
映画の内容はカッコウの逆バージョン。逆托卵。
新たに生まれた鳥もどきをティンヤver 2と呼ぼう。
最初は家族関係から書く。
家族というのは、ある意味では依存関係にあたるだろう。人の関係の大体は何かしらの依存なんだと思うが、特に濃厚である。子供の頃から親の価値観のもとに育てられ、
親の理想系を子に求める姿勢は少なからずどこの家庭でもあると思う。
しかし、この映画の母親は、SNSの病に罹っている。幸せな家庭というものを自分で演出、撮影、編集してそれをSNSにアップしている。汚いところはカットしちゃえばいいと思ってる人である。加工もマシマシ。
主人公であるティンヤは12歳である。自分の意思を持ち始める頃。ちょうど思春期である。しかし、反抗するという事はなく、母親に嫌われたくない。という気持ちが強く、母親に口答えできない。母親の理想像に寄せようとして口の開かないニコニコ顔を見せる。
それと比べて、ティンヤver 2は口がすごく開くし、すぐ泣く。
笑ったのは再婚相手の側転を見た時くらい。あの人が、ティンヤを信じてくれてさえいれば、希望はあったのかもしれないが、顔の同じヤツが子供を殺そうとしていればそりゃあ疑ってしまうよね。
話を戻し、ティンヤがあれだけ母親に逆らえない。自分の気持ちがわからなくなるという一つの原因は父性が弱いというのもあるのだろう。
と思ったが、よく考えると父親については正確に描写されていない。私はあの父親は再婚相手なのだと推測している。
弟は父の子だから、ティンヤとの仲も良くはないし、父は弟としか過ごしていない。のかと思った。そう考えると腑に落ちる。
父はティンヤの生理を疑ったがそのことには触れないし。ギターを弾いてる最中に話しかけられた時も、自分からヘッドフォンをつけていた。
しかし、弟には本を読み聞かせしていた。テロの家に行く時も弟と父は来なかったし。
これら全て、父親が再婚相手だからだと予想すれば納得できる。
ティンヤver 2は言うまでもなく、ティンヤの無意識に眠るものを具現化したものだろう。ティンヤ1人では抱えられないほどの不安が溜まり込みティンヤver 2が起動してしまったに違いない。
しかし、ver 2は制御が効かないジョジョのスタンドのようだ。
デインヤが不安を感じる種をターゲットにしている。最初は寝ている時に鳴いていて煩わしいと感じた犬、体操の大会の座を争っていた隣人、再婚相手の子供。
ver 2はどんどんティンヤに似てくる。最初はでかい鳥だったが、ゲロを食ってるうちに本人に近づいていく。爪じゃなくてゲロ食ったらそうなるんだろう。途中から共感覚で通じ合っていた。
最後はもうティンヤ本人が死に、見事本人へと昇格した。
内容はこんな感じだ。
良かった点はロケ地だ。あの森の中の住宅街というのがいい。スウェーデンはああいう場所が多いのかな?
カメラの動かし方も非常にホラーチックだった。音楽が少ないのがいい。とても怖い。
まあ面白い作品だった。