「寓話性」ハッチング 孵化 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)
寓話性
キラキラと幸福に見えるフィンランド一家ですが、実情はゆがんでいる──という家政夫のミタゾノみたいな構成で話が進みます。
娘はピュアな心をもっていてモンスターと分かり合うことができます。
人物や景観や調度がきれいなのに反して怪鳥の姿はおぞましく三池崇史のオーディションで飼われている四肢なしのように少女のゲロを餌にしています。
が、少女の暗い願望を具現化してしまう話は寓話的で、演出も手堅く(非英語圏の映画に対する漠然とした偏見をもって見始めましたが)予想したよりはるかにまっとうな映画でした。
Rotten Tomatoesは92%と61%で、まあまあな一般観衆にくらべて、批評家が高く評価していることがわかります。
ある批評家は『気味が悪いだけでなく、驚くほど甘く、12 歳の少女であることがどのようなものかについてよく観察しています。』と述べていました。的確な批評だと思います。同様に、何人かの批評家が、本作にただようおとぎ話やジュブナイルのような雰囲気を褒めていました。
本作はみにくいアヒルの子や人魚姫といった北欧童話と遠からずな構成因子を持っていると思います。そういう寓話世界を見ごたえあるホラーへ落とし込んだ手腕──童心を描きながら、じゅうぶんに楽しませます。
ぼくのエリ200歳の少女(2008)を彷彿とさせるところもありました。
思春期にかかえた鬱屈やダメな母親との葛藤をモンスターに置き換えた──とも言えるドラマで、幻想落ちにしたとしてもまとまる、示唆に富んだ話でした。
なお、口裂け耐性のない方はやめといたほうがいいかもしれません。
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