「【"托卵・・"幸せを偽る家族、過剰な幸せ、成功を望む母親の期待に応えようとする娘の心の闇が産み出した禍々しきモノが惹き起こした事。じわりじわりと心理的にやられます。】」ハッチング 孵化 NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【"托卵・・"幸せを偽る家族、過剰な幸せ、成功を望む母親の期待に応えようとする娘の心の闇が産み出した禍々しきモノが惹き起こした事。じわりじわりと心理的にやられます。】
- 今作品で一番恐ろしい人物はティンヤ(シーラ・ソラリンナ)の母親であろう。
家族の"完璧な生活"を動画で撮影し、配信する事が生き甲斐。
父親は彼女の浮気に気付かない振りをし、ティンヤは母親の過剰な期待に応えようと体操を頑張る。だが・・。-
◆感想<Caution 内容に触れています。>
■母親の望む娘になろうと努力するティンヤ。だが、そうなれない自分に対する怒りと哀しみはいつの間にか、不満と嫉妬に彼女の自覚なく変容していく。
・冒頭の、部屋に飛び込んで来たカラスの頚を母親がニッコリ笑いながら、捻るシーン。ティンヤがカラスの亡骸を探しに行くと、そこには小さな卵がある。
- そして、その卵はティンヤの不満と嫉妬を吸い込んで巨大化する。巨大化した卵はティンヤのネガティブな感情を吸収して大きくなっていくのである。-
・卵からは、禍々しきアッリ(水鳥)とティンヤが名付けた彼女の"分身"が産まれ、幸せ家族の周囲には、不穏な空気が漂い始める。
そして、ティンヤの隣に引っ越して来た体操教室の仲間の女の子は、何者かに襲われ大怪我をし、母親の浮気相手の男の幼子は金槌で、頭を叩き割られそうになる。
ー 最初は不気味な造形であったアッリの姿態が徐々にティンヤになっていく過程が恐ろしい。
アッリは”餌を与えてくれる”親であるティンヤの願望を叶えようと、暴走する。
そして、ティンヤはアッリの恐ろしき行為を察知する事が出来るようになる。
ティンヤとアッリがドンドン相似形になって行く・・。ー
<哀しくも恐ろしいラストシーンはティンヤの愚かしき母親に殺された、カラスの痛烈な報復だと、私は思った。
ティンヤの葛藤を繊細に捉えた恐ろしい演出が、秀逸な作品である。>
コメントありがとうございます。
言われてみれば母親の顔は歪んでましたね。綺麗にお手入れしていてもそういうのはにじみ出るものですね。父親は無害に見えて有害……おっしゃる通りです。