「鬱積のたまご。 煮つまるストレスはやがて、本人すらもコントロールできない自分を育てる。」ハッチング 孵化 humさんの映画レビュー(感想・評価)
鬱積のたまご。 煮つまるストレスはやがて、本人すらもコントロールできない自分を育てる。
母の、自分本位な性格。みせかけの家族への愛。
父の、事なかれ主義的な性格。無力な自分へのあきらめ感。
その積み重ねは家族になにを与えた?
息子の、愛情に飢え、思いやりのかわりに増す嫉妬心。姉より注目されたい願望に歪みの影。
娘ティンヤの、母からの抑圧に耐えることに慣れた果て。機嫌をうかがう故に同調するしかなく自分の意志を消すための哀しきほほえみ。
ティンヤの心情に追い打ちをかけたのは、常に自分にプレッシャーをあたえてきた母の裏切り。
しかも不倫を正当化させて直接聞かされたショック。相手の赤ちゃんへ接する母に寂しさを募らせる。
匂わす娘の様子に変わらず踏み込めない父。
姉をやっかみ信用しない弟。母を混ぜ選手の座をとりあう友人とのこじれ。
体操の大会がせまるにつれ徐々にもつれる感情と並行して起きる怪奇な事件の裏には悲しみや怒りを栄養にして育ち悪さするコントロールできない鳥(ティンヤのこころ)がいる。
蝕ばまれる彼女の救われなさは、鬱憤と葛藤のボルテージをあげ、孵化させた不気味なヒナがやがて狂気の鳥となり彼女自身にそっくりになっていくことに象徴されている。
家族を崩壊し終焉へと導くそのラスト。
それは間違いなくこの家族の第二章のプロローグでもあろう。
でも、、、
私が思うにこれはきっと、この家族のだれかの長くおそろしい悪夢。
闇を反映させたその夢に
うなされ涙して目が覚めたのは誰?
身だしなみをととのえ笑顔をつくり、美しく飾り立てた家で仲良く並んで家族の幸せな映像の配信の為の劇がまた今日もはじまる。
と、いうことで
なんだか怖くつらい話でしたが、それだけではなく
家族のあり方をちょっと考えさせられました。
なによりも濡れた鳥が苦手な私は握ってこらえた手がしびれてます。