「突如曇天の空から降ってきた爆音にあからさまな不快感を示して乗り込んできた警官の仕草までしっかり観察しているある意味どっきりカメラの元祖」ザ・ビートルズ Get Back:ルーフトップ・コンサート よねさんの映画レビュー(感想・評価)
突如曇天の空から降ってきた爆音にあからさまな不快感を示して乗り込んできた警官の仕草までしっかり観察しているある意味どっきりカメラの元祖
1969年1月30日、サヴィル・ロウにあるアップル社本社屋上にフラッと登場した4人がサウンドチェックやチューニングもそこそこに練習スタジオでジャムでもするかのように奏でる勇姿が塵一つ見当たらないクリアで鮮明な映像でスクリーンに映った瞬間に涙腺崩壊。冒頭でバンドの歴史がサラッと紹介されますがその本質は叩き上げのロックバンド、少数の取り巻きと近隣の屋上に出ることが出来た幸運にも程がある人達しかいない空間で伸び伸びと奏でる楽曲の数々はその後散り散りになってしまう運命などないかのように曇天の下に響きます。本作が物凄く面白いのはそんなリラックスした演奏が頭上から降り注ぐ中で足を止めるサヴィル・ロウの通行人達。一切の根回しが為されていないゲリラ演奏に激怒する人、歌声でビートルズだとすぐに解って大喜びする人、何が何だかよくわかっていない人の生の声と表情を丁寧に拾っています。苦情電話に困って演奏を止めさせようとアップル社に乗り込んでくる警官やそれをのらりくらりとかわす受付嬢のデビーさんらの攻防なども受付脇の隠しカメラでしっかり捉えている辺りこんな騒動になることは織り込み済でやってる茶目っ気が垣間見えます。
演奏を終えて録音テープを聴き直している4人の楽しそうな表情は少年のような朗らかさ、スタジオ録音の一発撮りまで一気にやってしまう若々しさを見ながらひとしきり泣いている間に終幕。当時1歳にもなっていない自分がリアルタイムで体験出来なかったことをこんな形で補完してくれた製作陣に感謝しかないです。
あと出番は少ないですが、ポールに寄り添うリンダがメチャクチャ可愛くてビックリしました。
コメントする