PLAN 75のレビュー・感想・評価
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尊厳死のあり方に訴えかける映画だが…
めちゃくちゃいい作品
劇中特別な説明台詞もないため、なんの予備知識を持たず見るとタイトルにもあるPLAN75というのがなんとなーく推測出来てもはっきりと分からず、あとその計画の意図もしっかりわからず終始モヤモヤします。
全体的に重く暗く進んでいくストーリで、この映画の核心部分も分からずこのまま、これ系にありがちな視聴者に答えだけをゆだねる形で終わるのかなと思っていたら最後に心が震えるほどの静かな感動がありました。
そこには監督の答えがはっきりと示されていて、
尚且つ視聴者を信用しないとこの作り方は出来ないと感じました。
高齢化とその先の未来を全世代に突き付けた作品ですが、
主演をしてるそれぞれ3人の出した答えがとても好感が持てます。
またその答えをセリフではなく映像だけで見せ切った監督は素晴らしい。
演技に関しては磯村勇斗さん、ステファニーアリエンさんたちが
見事に支えていて素晴らしく、
倍賞千恵子さんに関してはこの難役をさすがの域で演じていて、もう大優勝でした。
この数年で見ても素晴らしい作品で、こういう作品が評価されないなら
どんな名誉ある映画の賞もうすら寒く感じる程です。
ただ起承転結がはっきりして分かりやすい内容が好きな人たちには
受け入れにくい作品だと思うので評価がくっきり分かれるかもしれない
個人的には出会えてよかったし映画館でみるべき作品だった。
シン男はつらいよ終章
観て損はなかった。
河合優実さんの最後の電話の演技
がこの映画中一番グッと来ました。
最初はチョイ役の若い女性かな〜、
喋り方も今時の若い女性っぽいし、
と思って観ていたらビックリした。
受話器から出てくる声だけで
グッとなりました。スゴイ。
私自身よく思いますが、
当たり前だけど、亡くなった人は
次の日の朝日は見れないんだよね。
倍賞千恵子さんは、
次の日の朝日を観て鼻歌口ずさんで
ましたが、やっぱそうだよね。
太陽は何か人間に明るい影響や
誰にでも感動を与えますよね。
と改めて思いました。
倍賞千恵子さんを観ながら
高倉健さんの隣が似合うな、
ハウルだな〜と、勝手に想像。
シガニー・ウィーバー、
マギー・スミス等思わせる
キリッとした大女優。
河合優実さんがその後、
韓国映画のザ・ウィッチ張りに
施設に侵入して来るのかと勝手に
想像。雰囲気がキム・ダミに似てる気が。
PLAN75の青年が車で引き返す
シーンは、タランティーノの
パルプ・フィクションなら
Uターンした瞬間事故で血だらけ
だな、と勝手に想像。
勝手に深読みすると
PLAN75は申し込み時の説明通り、
亡くなった人達を集団火葬しては
いなくて、上司にはぐらかされた
リスト掲載の産廃業者に、
遺体を何かに再利用していた。
それを知った青年職員は、
亡くなった叔父を車で連れ出した
のかなと。
外国人介護士さんは
社会情勢的な要素で登場したのかな。
観て良かったと思いました。
色々考えさせる映画でしたし、
SFチックなストーリーに
倍賞千恵子さんが主演を演じた
のも興味を引きました。
優しい社会を願う
やるならとことん、年寄りに食わす米は勿体ない!と叫べ
生産性のない高齢者が日本の財政を圧迫している。とにかく年寄りに死んでもらって頭数が減れば、払わずに済む年金は浮くし、介護従事者は他の生産的な仕事に就けるし、親の介護で介護離職を余儀なくされる人も減る。もちろん医療費も減ると。
そんな発想をしたことがないとは言えないです。社会が発展して競争力が高く、豊かな国になるために使うべきリソースを、死にゆく既に意識のない寝たきり老人に流し込む栄養剤に使っていては勿体ないと。
この映画は当然、その種の発想を否定するための映画です。
まず始めに冒頭で、老人施設で大量殺人をした男が震える声で思想を語りますよね。「この国は年寄りが増えすぎて財政を圧迫して…」というような。そして語り終えたあと自殺します。まず、堂々と言え!と思いましたね。震える声じゃなくて。コントラバーシャルな映画になるしかないんだから、徹底して「年寄りを殺して頭数を減らせば国がよくなる」理論を叫んだらいいのに。映画の中で、「そうした発想は間違ってるよー」って示さなくったって間違ってるのはわかります。いかにプラン75が欠陥があるのかが示されますけど、逆に「え、プラン75は本当に国がよくなるかも知れない」と思わせてくるくらい狂った説得力を持って、私たちの心の隅にいる悪魔に栄養を与えるような映画が観たかったですね。とても常識的な人たちばかりで、いまと変わらない社会で、ならなぜこんな制度が始まんだって。
最後叔父の遺体を盗み出して別の場所で火葬をしてもらおうとするシーンは面白かったです。情がある叔父。すでに亡くなっていたとしても、死体としてone of themとして処理(荼毘に伏すのでなく)されるのは耐え難かった。多くの日本人同様、ひろむ君は自覚的に宗教に厚くはないと思いますが、遺体の扱いにおいて耐え難いことがある。ここでは日本人の無意識には確かに、超越に関する共通認識がある、という気づきを得た気がします。そこに今よりは繋がれるヒントがあるように思いました。
また日曜日の昼下がりに映画館で鑑賞したんですが、私以外の客がお年寄りの方ばっかりで。まさに70歳前後だという方々がこんな映画見せられて、何を思ってるんだろうと思うと気まずくて仕方なかったです。映画が終わったあとお年寄りの方が話しているのが聞こえました。「内容が内容だから、私なんか身につまされて」「最後があったからよかったけど」「若い人に観てほしいわね」などなど。
声を大にして言いたかったですね。身につまされることはないですよ!フィクションだと吐き捨ててください!こんな制度ができたら「利用した方がいいのかなあ」等と考えないで!ふざけんなと看板を蹴っ飛ばしてください!と。
想像通りの思考と展開
今年一番の“がっかり”映画
10万円(笑)
重たいテーマを淡々と
寅さんが見たら悲しむだろうなぁ~(:_;)
これが長編デビュー作となる早川千絵監督が、是枝裕和監督が総合監修
を務めたオムニバス映画「十年 Ten Years Japan」の一編として発表した
短編「PLAN75」を自ら長編化。
本作は、75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行された近未来の日本を舞台に、
その制度に翻弄される人々の行く末を描くものです。
少子高齢化が一層進んだ近い将来の日本。満75歳から生死の選択権を与える制度「プラン75」が国会で可決、施行され、当初は様々な議論を呼んだものの、超高齢化社会の問題解決策として世間に受け入れられるようになりました。.
1983年のカンヌ国際映画祭は、老人を山に捨てる今村昌平監督の「楢山節考」に最高賞パルムドールを授与した。そして今年の同映画祭では、再び老人を捨てる邦画が世界の注目を浴びたのが本作でした。しかし、現代の“姥捨”はより狡猾に洗練されていたのです。
物語は、近未来の日本。75歳以上は自身の生死を選べる新制度「プラン75」が導入されました。
夫と死別して以来、誰に頼ることなく、長らくひとりで暮らしてきた78歳の角谷ミチ(倍賞千恵子)は、ホテルの清掃業をなりわいとしていて、同世代の仲間たちと寄り添うように、つつましく生きてきたのです。仲間うちでも新制度は話題の的。皆なんとなく現実を受け入れているようでした。
けれども同僚の稲子(大方斐紗子)が勤務中に倒れたのを機に、彼女の暮らしは一変すします。「高齢者を働かせるなんてヒドいじゃないか」という世間からの叱責の声は、ミチたち高齢従業員の解雇という最悪の結末をもたらすことになったのです。さらに団地の取り壊しも決まり、ミチは仕事と住居を同時に探さなくてはならなくなる羽目に。だが高齢者であることを理由に、断られ続ける日々がつづきまます。次第に追い込まれていったミチは、ついに「プラン75」の申請を決意するのでした。
申請窓口では職員が手取り足取り笑顔で指導。「プラン75」による安楽死の奨励は立派な国家事業となっていたのです。
一方、市役所の「PLAN75」の申請窓口で働くヒロム(磯村勇斗)、死を選んだお年寄りに“その日”が来る直前までサポートするコールセンタースタッフの瑶子(河合優実)たちスタッフは、上司からは「情が移るから対象者とは交流を持つな」と言われていて、杓子定規的な対応を心がけていました。当初は、た彼らだが、ひょんなことから「プラン75」の対象者たちと接点を持つこととなり、それぞれの思いが交錯。やがて自分の行動に疑問を抱くようになり、それがきっかけで、このシステムの存在に強い疑問を抱いていくように変わっていくのでした。
また、フィリピンから単身来日した介護職のマリア(ステファニー・アリアン)は幼い娘の手術費用を稼ぐため、より高給の「PLAN75」関連施設に転職。利用者の遺品処理など、複雑な思いを抱えて作業に勤しむ日々を送ることになります。果たして、「PLAN75」に翻弄される人々が最後に見出した答えとは―――。
「死ぬ時くらいは選びたい」。拡散されるスローガンはまるでハーメルンの笛の音。“老人ホイホイ制度”に導かれ、高齢者は自分の足で断崖絶壁へ進みます。若者が老人を山頂までおぶって、罪悪感で苦しむ必要もないのです。同調圧力に弱く、考えることを諦めた現代人の姿がここに映るのでした。今の日本の空気がリアルに漂い、奇妙なほど説得力を持つドラマとなったといえるのでしょうか?
野に咲く花のようなしなやかさと強さを持つ主人公ミチを、倍賞千恵子が繊細に演じていて素晴らしかったです。ただねぇ、大の寅さんファンのわたしとしては、もし年老いたサクラがミチのような孤独で老いぼれた姿になっていたら、どんなに寅さんが嘆くことかと想像してしまいました(^^ゞ
サクラとしての倍賞千恵子に馴染んできたものとしては、本作で描かれる冷酷さにはとても違和感を感じてしまいました。彼女の代表作「男はつらいよ」の世界は、言葉は乱暴でも中身は温かさに包まれていたので、その落差の大きさに面喰らってしまいました。
映画の中では、老人に対し、誰もが優しい笑顔と柔らかい言葉で接します。しかし態度とは裏腹に、誰もが冷酷に老人を突き放しているのでした。そしてこんな姥捨山制度にて対して、プラン75のスタッフは何の疑問もなく、使命感を持って働いていること。加えて世間での受け止め方も、もうそれが当然という感じで、強い反対運動は描かれませんでした。さらに「プラン75」を申請する高齢者は、何のためらいも、迷いもなく静かに次々と安楽死を迎えるのでした。
少なくとも最近公開された『スーパーノヴァ』や『ブラックバード 家族が家族であるうちに』などの安楽死をテーマにした作品では、安楽死に至るまでの本人とその家族、友人らの葛藤が色濃く描かれていました。ところが、本作ではプラン75に沿って、老人をホイホイと安楽死させてしまうのです。
ヒロムや瑶子ら遂行する側に立つ若者たちの視点も交えてはいるものの、疑問を持つ止まりでした。現実にそんな立場で疑問をもてば、即刻仕事を退職し、反対運動の先頭に立ってしまうことでしょう。
さらにミチは口数が少なく、尊厳死を選ぶ理由さえ、セリフで説明されません。そのためミチの安楽死の決断が唐突に見え、ラストの不可解なオチにいたる行動にも、イマイチ感情移入できませんでした。
高齢者が一律75歳で自ら望んで安楽死してしまう近未来社会。それをステレオタイプに近い演出で取り組んだ早川監督の意図は明確です。「PLAN75」とは、現在の政府の福祉政策は姥捨山に向かっているという警鐘が鳴らしたいということです。その究極の姿をメタファーとして描いたのが本作です。
いま昨今の福祉政策は、少子高齢化のためピンチを迎えています。長らくつづくデフレの前には、消費税を連続で上げても、かえって景気は冷え込み、歳費の減少は止まりません。その中で福祉や介護が必要とする高齢者は年々増えていく一方です。
こんな状況の中で、景気対策や経済成長の予算を削減して、福祉予算ばかり拡大しては、デフレが増長していき、歳費収入は先細りしていくことでしょう。
極論として、こんな恐怖の姥捨山映画を作って、国民に恐怖の予感を与えるくらいなら、倍賞千恵子が慕う小津安二郎のような家族の絆を強めるような作品を作った方がマシだと思います。少子高齢化とデフレが続く中で、政府が何から何まで国民の生活を公費で賄うことには限界があります。だからこそ求められるのは家族の力です。江戸時代はそうやって子が親を養うのが当然でした。それがいまや政府が養うのが当然と考えている人が増えてきたのはいかがなものでしょうか。
家族のない人には、経済的に成功した人のたしなみとして、高齢者や生活困窮者に手を差しのべる社会貢献活動をもっと定着させていくべきでしょう。
社会には、そんな優しさが必要だと強く思わせた作品となりました。
問題提起だけじゃなんの新鮮味もない 個人的には夢を壊された。何がって
なんてタイムリーな
老人問題の事ではない
冒頭のシーン
考えの浅い自分本位な若者が起こした事件がplan75の発足のきっかけとなった
そう、安倍元首相銃撃事件
やった事は許される事ではないが
おかげで統一教会と政界の繋がりが暴かれた
犯人にそこまでの深い意図があったか知らないが、マスコミは負けないで欲しい
政治家は未練たらしく二の足を踏んでいるからね
人間には生きる権利と義務があるが、死ぬ権利もあると常々言ってましたから、plan75は当然あってしかるべしと思います
それをセンセーショナルに取り上げる監督の意図を知りたくて観たわけです
既に安楽死を認めている国がある現代に
日本でそれを認めた場合、どうなるか
律儀で真面目な日本人
そして、経済発展のチャンスと捉える抜け目のなさ
なかなか素晴らしい制度でした
少ないながらも支度金が用意され、メンタルケアまでしてくれるんだから至れり尽くせり
さすが日本人が考えた制度です
問題は老人が生きて行けなくなって死を選ぶしか無くなるような社会の仕組みです
高齢化社会がどん詰まりまで来た近未来なのだろうか
政府は無策なまま、この時を迎えてしまったんだろうかと首を傾げてしまう
安楽死を認めるなら希望する人も増えるだろうし
義務を終えた人は自殺する権利を与えればいい
何がなんでも生かす医療も変えないといけない
人工呼吸器を付けない権利
高栄養の点滴を拒否する権利
緩やかな窒息死、餓死は苦しみを伴わない
そうすれば寝たきり老人はグッと減る
後は移民の受け入れかなあ
税金と社会保険を払う人を増やさないと
そのためなら働き口を作らなければ
AIとかで人が働く場所が減っていくだろうからね
いや、一人あたりの生産性を上げればいいんだから、AIの進歩でなんとかすれば移民に頼らなくても良くなるかも
子育て世代の優遇も含め素人でもこれくらい策を考えられるんだからなんとかなるでしょう
映画は磯村勇斗の理にかなわない行動と
なんで助かったのか意味不明なアクシデントのシーンで収拾がつかなくなって終わる
問題提起しただけ
最後は、監督、何がしたいん?とあきれた
かつて、チャールトン・ヘストン主演のソイレントグリーンというSF映画があった
ラストは支給されたウエハース状の食料が死んだ人肉から作られていたというオチだった
これくらい小洒落たラストを作れんもんかな
まあ、マクドのハンバーグのパテがミミズで出来てるとウワサがたってもなんの動揺もなかった側の人間だから、人肉の再生利用は当然と思っただけでしたけどね
倍賞千恵子
昔はとてもキュートでした
永野芽郁が足元にも及ばないくらいにね
原節子のように歳をとってからは人前に出なかった女優の生き方の真逆
考え方は個人の自由なのは理解している
ただ、今回はあまりに素を晒しすぎたんじゃないか
歳をとっても存在感がある
大女優の貫禄なんでしょう
変に目立って、82歳の姿が画面から浮き出るのは見たくなかった
批判は承知の上のホンネです
生きるって眩しい。死は決して人間の手のうちにあるものではない
少子高齢化が進む日本。
高齢者が若い人の荷物となり
75歳以上が自らの生死を選択できるシステム<プラン75>。
その政策に様々な人が様々な形、思いで関わっていく。
生きてく事も難しいが、死ぬ事も難しい。
人生の幕引きを選択出来たとしても、自分に何ができるだろう。何がしたいだろう。
人は生まれた時は何もできない。成熟していくごとに様々な事が当たり前に出来るようになり、いつしか社会の中での自身の存在意義や生きがいを見出し、誰かと共存して生きている。
老いていく事は少しずつそれらを手放さざるをえなくなり、出来ていたことが出来なくなり、
いつしか自分の生きてきた人生、そして自分自身と向き合う事が全てとなっていく。
自分だったらどうだろう。は勿論
大切な人だったら、親だったら、ただの隣人なら∙∙∙。
人が人を大切に想い、慈しみ、喜怒哀楽の共有が出来るだろうか。
人の生死に関わるその瞬間、何を思うだろう。
寂しく哀しく。でも生きてるってとてつもなく眩しい。
ラストのシーンは、なんだかよくわからない感情の涙がとめどなく溢れてました。
倍賞千恵子 さん素晴らし過ぎて苦しかった
心が揺さぶられる
観賞中、たくさんの感情で心が揺さぶられ、胸が締め付けられました。同情とかではなく、何とかしてあげたい、どうにかならないのか。でも誰が悪いとかではないし。
登場人物それぞれに感情移入し、戸惑ったり、苦しかったり、すごく疲れる2時間でした…。
主人公のミチさんは、まだまだ頭もしっかりしているし、健康面も問題なし。職場の仲間たちとのお喋りを楽しみ、仕事もこなす。
でもそれが、あるキッカケで全部崩れてしまう。
一度崩れた彼女が普通の生活を取り戻すことがどれだけ難しいか、そして彼女がどんな葛藤や孤独や惨めさを感じているのかが、倍賞さんの素晴らしい演技により悲哀と共に伝わりました。
ミチさんが、あの決断を後悔しないことを祈ります。
感想を言語化するのがとても難しい。
ガツンと来ました…。素晴らしかったです。
ミチさんの「15分なんてあっという間ねー」という言葉が、まだ強く耳に残っています。
穏やかで洗練されて、そしておぞましい公共サービスのいかにもありそうな感じが印象的な一作
まったく将来に展望が見出せなくなった、近未来、というよりも実際の日本社会のパラレル世界を描いた一作。一定の年齢に達したり、何らかの基準でカテゴライズされた人々を排除(殺害含む)する社会を舞台とした作品は、『2300年未来への旅』(1977)や『ソイレント・グリーン』(1973)などの「古典」を含め数多く制作されており、特にテーマとしては真新しいものではありません。一方それらの多くは現状の問題が破滅的に進んだ未来社会を描いているため、そのおぞましさにぞっとはするけれども、「まぁ架空の物語だし」とちょっと心理的な距離を保って鑑賞することが可能でした。
しかし本作の基本設定は、明確に現在の「後期高齢者(75歳以上)」という制度的区分を踏まえており、その現実感は前述したような先行作品よりもかなり高くなっています。もし国家が選択式の安楽死を合法化し、その手続きを民間企業が請け負ったらどうなるのか、主人公の女性(倍賞千恵子)含めた何人かの個人的な視点から描いています。実際はこの法案が制度化されてしまったら、かなりの政治家が自ら安楽死を選択しなければならなくなるので実現性そのものはあまり高くなさそうです。しかし理不尽な制度を、まるで社会善であるかのごとく喧伝して既成事実化してしまう手法自体はこれまでも何度も繰り返されてきており、だからこそ作中で、一見洗練された公共サービスであるかのように「PLAN75」を宣伝するCMの語り口に奇妙な既視感を感じてしまうのでしょう。
枯渇した労働力を高齢者や外国人就労者が肩代わりしつつも、都合が悪くなると使い捨てられる状況、老人の孤独死など、一つの物語を核に、よくここまで現状の日本社会の問題を盛り込めたなぁ、とむしろ感心。劇場長編映画の初監督作品とは思えないような、早川千絵監督の抑制が効いて無駄のない演出手腕は見事だけど、「これからの日本社会に希望が持てました」といったような前向きな気分には、残念ながらなりにくい作品だけに、気持ちに余裕のあるときに鑑賞するのがおすすめです。
PLAN75的空気感は身近にある。絶望から希望を描く映画。
ユーロスペースにて。
ようやく観賞できた。
あり得ないような設定にも関わらず、現在の世相ではあながち存在しないとも言い切れない世界。
独居老人のリアル。
家は借りられない、職もない。
人生百年時代の傍らで。
生きられない人は死を選ぶべきですよ、と国家が煽る。
始終体も心も締め付けられっぱなしなのだが、最後は希望の光を見た気がする。
血縁関係に甘んじることなく、理解しあうことの尊さ。
他人であっても情を通わせ、理解することで人生を豊かにできる。
絶望から希望を描いた映画。
それにしても人生百年時代と言われるよりもPLAN75のほうが責任ある国家の選択だと感じてしまう自分がいる。
この国を覆う異様さもこの映画は際立たせてはいないだろうか。
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