劇場公開日 2022年6月17日

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PLAN 75のレビュー・感想・評価

全390件中、1~20件目を表示

4.0焦燥感と行き場のない怒りで心が痛い。

2022年9月19日
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鑑賞方法:映画館

合理的に考えると行き着く先はこうなんだろう。
携帯の勧誘のような「PLAN75」の販促と受付ブース。職員が顔色ひとつ変えず淡々と受付手続きを進める姿が恐ろしい。「貰える10万円は葬式費用に回される方もおられますよ~。」まるで旅行のプランニングや住宅ローンの説明のようだ。

藤子・F・不二雄の『SF・異色短編(1)』に出てくる 「定年退食」と「間引き」という2つの短編がオーバーラップした。「定年退食」では“定員法”というものが制定され73歳以上は年金や医療など国家による一切の保障が打ち切られる。「間引き」では人口爆発による食糧難で“カロリー保険”という早く死亡するほど遺族に食券が多く配布される商品が発売される。

NKHスペシャルの「終の住処はどこに~老人漂流社会~」には、1カ月毎に施設をたらい回しされる高齢者の現状があった。安心して居ることのできる場所がない。「定住できる安心感。心ある人が見守ってくれている安心感。これが最低限度の尊厳だがこれが損なわれている。」と専門家は言う。若いころは運送屋を営みバリバリ働いてきた老人が「家族とご飯を食べたい」と涙を流す。なぜ最後にこんな仕打ちを受けなければならないのか。

ボーヴォワールの『老い』も再読した。
・この社会は彼らに「かつかつの余命」をあたえるだけで、それ以上は何も与えない。
・独り暮らしの老人は「悪い健康と窮乏と孤独という三重の悪循環」に陥る。
・老年の悲劇は、人間を毀損する。この人生のシステムはその構成員の圧倒的多数者にいかなる生存理由(いきがい)も与えない。

角谷ミチ(倍賞千恵子)の住まいが一人で暮らす私の母の住まいに酷似していた。
「団地」「台所の瞬間湯沸かし器」「布巾を多用」「藤の間仕切り」「コードのある昔ながらの電話機」「観葉植物」、、、。物は多いが小綺麗で慎ましやかできちっとしている。このぐらいの年代の女性ってこんな感じが多い気がする。こういう人たちの尊厳が脅かされる世の中だけは見たくない。

PLAN75の受付をしていた市役所の青年、申込者がその日を迎えるまで話し相手になるオペレーターの若い女性、安楽死した人の遺留品を処分する仕事に従事する外国人の女性。。 救いはこの3人の若者が最後に見せた人間的な涙。そこには確かに血が通っていた。
そしてもうひとつの救いは、最後の場面で丘からの風景をみていたミチがその場を去る時に見せた毅然とした横顔。

映画的にどうというより、大きな衝撃と問題を与えた点で重要な作品である。
明日は敬老の日、、、。

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momokichi

3.5生死の選択をめぐる「ざわつき」

2022年6月21日
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 75歳に達すると自分の死を選択できる制度、「プラン75」。コロナの日々でワクチン接種や治療の優先順位を示されるようになり、命をランク付けをするようなこの制度も、妙な現実味を帯びている。冒頭、高齢者を襲った男は「国のために死ぬ考えは、この国ではきっと受け入れられる」と遺書を残す。「プラン75」のPR動画に登場する女性は「生まれてくるときは選べない。だから、死ぬときくらいは自分で選びたいの」と微笑み、PRは「次の未来のために」というコピーで締めくくられる。では、この制度を志願する人々の実際は、一体どうなのか。
 ホテルの清掃係として働くミチは、つつましくも穏やかな生活を重ねていた。黙々と働き、同年代の同僚と他愛もないおしゃべりを楽しみ、時には歌う。ある日、同僚のひとりが職場で倒れたことで、彼女の生活は一変する。彼女たちは解雇され、途端に生活に行き詰まる。職探しや転居もままならない。ためらってきた生活保護受給さえハードルが高いと感じたミチは、とうとうプラン75の選択に至る。
 本作には、モデルケースとなるミチを軸に、窓口担当として働くヒロムとその叔父、ミチを担当するオペレーターの瑤子、関連施設で働き始める、フィリピンに病気の娘を残してきた元介護士•マリアが、主要人物として登場する。けれども、ミチと瑤子、ヒロムと叔父以外は、ほとんど接点を持たない。それぞれに「ざわつき」を感じながらも、声を挙げることはなく、黙々とプラン75に携わっている。観客だけが、それぞれの「ざわつき」と、彼らのすれ違いを垣間見ることができるのだ。
 本作の持ち味は「ざわつき」。冒頭ゆっくりと流れるピアノから、美しいけれどどこか不吉で、気が許せない。そして、繰り返し現れるミチの常に張り詰めた表情、内実を知ったヒロムのためらいと驚き、職場の会話を立ち聞きした瑤子の沈黙、高収入の仕事の「中身」を知ったマリアの静かな動揺。美しく整然としているゆえの違和感が、じわりじわりと描かれていく。
 さらには、プラン75が、あくまで本人の選択で、10万円の支度金が支給され、合同葬であれば費用が掛からない、といった(一見)完璧な至れり尽くせりのサービスであることも、「何かがおかしい」と心がざわつく。「今、(本当は)何が起きているのか」、「彼らは(内心は)どう感じているのか」を感じ取ろうと、流れに身を任さず、ふと立ち止まりたくなっていく。カギとなる「何か」を見逃さないよう、聞き逃さないよう、心のアンテナを高く伸ばす。そのような「静かな牽引力」が、本作には満ちていた。
 ミチが最後に見た光は、きっと、それぞれの場所にいる彼らにも、静かに降り注いだはず。「生まれてくるときは選べない。そのかわり、「死なない」で「生きる」ことを、人は日々選択している」と、自分なりの結論に至り、2時間弱の旅をひとまず終えることができた。

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cma

3.5設定と演出とキャスティングの妙

2022年6月19日
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悲しい

怖い

勿論、間近に迫る日本の近未来を見据えた視点には震えるものがある。75歳を過ぎると自ら生死を取捨選択できる制度が導入された社会というのは、実際、年金制度の見直しが決定したこの国では、すでに近未来ではないからだ。

しかし、本作のリアルはより細部に宿る。ある日突然、高齢を理由に解雇された78歳のヒロインが、役所に出向いて『まだ、働きたい』と申し出ても、担当者は年齢を理由に彼女の意向を遮断してしまうシーンには、行政の冷酷さと、まだ生かせる労働力を適切に社会に還元できない政治の対応力の遅さがあからさまなのだ。そういう意味で『PLAN 75』がいかに短絡的な制度かがよく分かる。

細部がリアルなのは、演技者たちのスキルに負うところも大きい。政治への疑問や不満を声高に訴えられず、未来へのわずかな希望に縋って生きる主人公は、これまで、庶民の喜びと悲しみを映画を介して代弁して来た倍賞千恵子ならではの役どころだし、『PALN 75』の申請窓口で働く青年を演じる磯村勇斗の、老人たちに対する優しい目線には、思わず引き込まれるものがある。

すぐそこまで来ている厳しい現実が、俳優たちの魅力によってより身近なものに思える。本作の高評価は監督の演出力とキャスティングによるものだと思う。

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清藤秀人

4.5想像と解釈を喚起する「余白」の巧みさ

2022年6月18日
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鑑賞方法:試写会

悲しい

知的

これは、少子高齢化のような“正答”のない難題に直面したとき、誰もリスクと責任を取って解決にあたろうとせず、ひたすら先延ばしにしようとする日本的なメンタリティへの静かな抗議ではないか。本作を観ながらそんな風に思っていたのだが、鑑賞後に資料を読むと、早川千絵監督の意図は違うところにあったようだ。本作を着想するきっかけのひとつに、2016年に相模原で起きた障害者施設殺傷事件があり、「人の命を生産性で語り、社会の役に立たない人間は生きている価値がないとする考え方」への危機感が、映画を作る原動力になったとしている。

とはいえ、75歳以上が自ら生死を選択できる制度が施行されている近未来の日本を舞台にした本作は、特定の意見や主義主張を明示する映画ではない。登場人物らの苦悩や心の触れ合いを描いているが、彼らに思いのすべてを語らせるのではなく、観客のさまざまな想像や解釈を喚起する“余白”が大いにある。1983年のカンヌ国際映画祭パルム・ドール受賞作「楢山節考」で描かれた姥(うば)捨ての風習を想起する人もいれば、スイスやオランダなど一部の国で合法化されている安楽死と関連付ける人もいるだろう。この国では安楽死について口にすることさえタブーのような空気があるが、本作をきっかけに議論が活発化するなら良いことだと思う。

本作の主演に倍賞千恵子をキャスティングした点にも感心させられた。当たり役は「男はつらいよ」シリーズでの寅次郎の妹“さくら”であり、高度成長期に日本の国花の役名で知られた女優が、本作では衰退する日本、“日(ひ)没する国”を象徴するようなミチを演じているのだ。このアイロニカルな巡り合わせに思いをはせる観客も多いのではないか。

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高森 郁哉

3.5私達に投げかけられた問題提起

2025年7月15日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

悲しい

俳優さん達の演技がとても素晴らしかったです。
社会派ストーリーなので、冒頭の事件を絡めて、登場人物の誰かがplan75に対して声を上げるのかな?と思いましたがそうではなく。
ただ淡々と賛成も否定もせずその政策を受け入れ、その下で働く職員や、自分の死に方に悩む高齢者達の姿。
最初はもう少し動きのあるストーリーが良いなと思いましたが、見終えた今、逆にそれが日本人らしいというか、国民性をも表現されている気がしました。

昔からずっと言われ続けている少子高齢化社会。
実際はこれと言った政策が練られる訳でも、改善される訳でもなく、今でも日本人皆が見てみぬふりをし、政治や将来の話をする事を避けてきた現実。
それらを私達に問題提起されているのかなと思いました。

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qq

5.0ベタに社会問題を描くことを避けた詩的な演出

2025年7月14日
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鑑賞方法:VOD

この、何というかゴダールみたいな親切じゃない演出や、アルトマンみたいな群像劇の感じがグッときた。
社会問題を描きたいわけでもないと思う。
老人問題や貧困問題を描きたいならもっとベタにできる。
カメラの美しさで感情の昂りや諦念や喜びをさりげなくさりげある演出で描いた傑作、と言いたい。

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Ferma

5.0高齢化問題?

2025年7月8日
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日本ではありえない設定だがリアリティのある作品。
しかし欧州のスイス、ルクセンブルク等の先進国では死の選択もあるそうです。
これは高齢化問題でもあり貧困問題でもあるかもしれませんね。

今から健康、お金を大事にしなければと思わされる映画でした。

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alextm

3.5このような制度が

2025年6月30日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

難しい

出来ないことを祈りたいが、自死を選択できる自由があっても良いとは思った。
ただ、それは不治の病などの場合に限る方が良い。

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four7777

3.0センセーショナル・ムービー

2025年6月28日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

扱っている題材はセンシティブで、設定はセンセーショナル。
余白の多い演出は逆にちょっと狙いすぎているようにも感じました。

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光陽

0.5わたしのかんがえた未来()

2025年6月24日
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鑑賞方法:VOD

単純

人間を描くにあたって、もっと怒りや嫉妬、悲しみの感情があると思いますが、ひたすら淡々と過ぎていくだけど退屈に感じました。

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𝖒𝖚𝖓𝖆𝖈𝖞

2.0私の「PLAN75」は、大好きな映画を観ながらであったら…

2025年6月22日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

監督がこのTV放映のすぐ後に劇場公開された
「ルノアール」の早川千絵だったので、
それに因む放映だったのだろうか。

若い頃は「楢山節考」という
老いた方には厳しい内容の映画があったが、
年齢的に臨場感が増したこともあり、
似た匂いのこの作品を恐る恐る鑑賞した。

この淡々としたドキュメンタリータッチは
本来、リアリズム的映像手法なのだと思う。
しかし、この作品では、
外国人労働者問題などへの
間口を拡げ過ぎたことと、
更には、登場人物それぞれが
社会的立場上の微かな接点こそはあるが、
人間関係としての絡みがほぼ無いことが
ドラマとしての盛り上がりの欠如を招き、
映画作品としての深みを生み出していない
ような気がした。

人間の価値や命の尊さへの想いや、
こんな姥捨て山のような社会システムが
あってはならないとの
制作者側の狙いは理解するが、
国家プロジェクトとして開始されたはずの
この“尊厳死”のシステムが貧相過ぎるのと、
外部者がその最期の場所・タイミングに
いとも簡単に侵入出来るという安易な設定
にしたのかが私には理解不能で、
問題提起以前に、
ドキュメンタリー的作風にも関わらず、
リアリティの欠如感が私の脳裏を
混乱させてしまい、
早川監督の最新作「ルノアール」への期待も
少し萎む鑑賞になってしまった。

さて、若い頃に比べて肉体的には
万全さを欠いてきている己の現状だが、
一方で、人生の積み重ねの結果、
色々な絡み合いが増えて来て
精神的には人生の面白みを
感じ始めて来ている昨今、
少なくとも身体が動く間は、
この作品のようなシステムがあったとしても
厄介にならないようにしたいものだが、
しかし、身体の自由を失い始めた際は、
この作品での無味乾燥なシステムではなく、
せめて、美味しいもの食べながら、
そして、大好きな映画作品を観ながらの
「PLAN75」であったらなあ、
と願わずにはいられなかった。

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KENZO一級建築士事務所

0.5老人問題ではなく貧困問題

2025年6月21日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

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ぴー

3.0テーマは良いにしても

2025年6月21日
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鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

悲しい

倍賞千恵子のバックボーンが不明瞭なため感情移入がしきれない感じでした。なんであそこまで困窮してるんだか。
plan75があるのに生活保護はあるんかい!とも思ったりして。

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じゃがー

4.0無気力

2025年6月19日
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鑑賞方法:映画館

75歳で安楽死を選択出来る。
ストーリーは淡々と進み、大きく感情を動かされる訳でもなく、メッセージ性も感じない。
方や、ヘルパーをしていた外国人の女性は、国に残した5才の娘の心臓が悪く、救う為に、懸命に遺体の遺品処理の仕事に、勤める。
それも淡々と。。

安楽死と言うワードは考えさせられるが、この映画は何を伝えようとしてるのか?

後で気付いたのは「無気力」と言うことか?

どこかの国は、安楽死を認めてる所があったのじゃなかったかな?
歳じゃなく、いろんな厳しい条件をクリアした人のみ?

映画の内容でなく、重度な介護が必要で、施設に入れない人とか?
国で決まった政策なら、いろんなパターンがあるだろうが、「無気力」を表現したかったのなら、納得かも。

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NOM

4.0孤独

2025年6月14日
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鑑賞方法:VOD

悲しい

難しい

65歳以上の高齢者人口の割合において日本は世界最高
そして、65歳以上の4人に1人が働いている日本
私は現在36歳ですが、一体いつまで働くのだろう、これだけ働いてその後はどれくらいゆっくり過ごせるのだろうとか、人生のほとんど働いて終わり?とか、いろいろ考えたりします
これは、75歳以上の方が選択死するというお話ですが、年齢に関係なく人はみんな孤独と戦っていると思います
結婚しているから子供がいるから孤独じゃないという訳でもなく、家族や友達がいてもふと孤独に押し潰されそうになることがあります
高齢社会により、社会保障費など現役世代に対して更なる負担が予想されること、実際いろんな問題がありますが、もしこの制度が成立したとして、周りの人が利用しようしたら絶対止めたい、でもその後自分には何ができるのか…
全然纏まりませんが、いろんなことを考えさせられる作品でした

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YASUKA

3.5意地悪

2025年6月13日
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鑑賞方法:VOD

超少子高齢化が進んだ日本の制度PLAN75。満75歳から生死を選択でき死者を募るなんてナンセンスすぎる発想だし、こんなん絶対面白くないと思ったけど最後まで観たら、ん?これまあまあかなと思った。

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ゆうき

3.5内容面白い、キャストもいい

2025年4月27日
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ただ間延びした感じと

問題提起の内容に対して

演者が少なすぎて気持ち悪い。

集団の施設をあんなに伽藍堂にしては

気持ち悪い。

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ボタもち

4.0切ない

2025年4月6日
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鑑賞方法:VOD

泣ける

難しい

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美緒

3.0「善」か「悪」か

2025年3月27日
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泣ける

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rain

3.0折角の問題提起がぼやけているような

2025年2月14日
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落ち穂
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