「ホン・サンス マルチバース」小説家の映画 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
ホン・サンス マルチバース
一粒で二度も三度も美味しい、ホン・サンス マルチバース!
理由はなんだかわからないけど、自分の心がそう言ってるから「今日は〇〇の日」
自分自身を肯定してあげた時、出会いの奇跡が見えてくる。
小説家という人間がいるのではなく、私が書くものが小説になり、私が撮るものが映画になるのだ。
ガラス越しの“小学生”が印象的でした。
女三世代の揃い踏み。
Twitterの文字数ではとても収まりきらないです。
ほんと面白いわ〜。
少ないヒントを手がかりに、登場人物達の関係性が紐解かれていく興奮!
刻一刻と変化していく距離感。
水面下の心理が透けて見える、一挙手一投足がスリリング。
-だからあんな態度だったのか!
-黙ってるけど、さては同じだな。
-実は自分に対して言ってるのね。
ポンコツな頭がフル回転するのが気持ち良い。
1本だけでもこんなに面白いのに
『逃げた女』『あなたの顔の前に』と出演者がリンクしているので、復讐にも見えるし、答えにも見える仕掛けまで!
相当楽しめます。
小説家や女優になりたい人は山ほどいるけど、実際に名乗れる人はほんの一握り。
更に結果を残せる人となると、もはや神から与えられた恵まれた才能…。凡人からすると、その能力を活かさないのは勿体なく見えてしまう。
でも、小説家というギフテッドが書いたものだけが“小説”になるのではない。
“小説家”に限らず、レッテルやカテゴリーに求められる息苦しさやプレッシャー。
それは“女性”や“母親”にもあるだろう。(もちろん“男性”や“父親”にも)
私が書くものが小説になり、私が撮るものが映画になるのだ。
ホームビデオだって映画になる。
ってことで、“小説家”の映画なのだけど、
それはそのままブーメランで監督にも戻ってくる。“映画監督”の映画でもある。
二重構造、三重構造が面白い。
=虚構の中のリアル=
一体これは…。もしや私、現実では叶わない永遠の愛の誓いを見せつけられたのか??
ギャーッ!ホン・サンスなんてことを!
ん?いや待てよ。それにしては健気がすぎないか?
…昔、誰かが「今井美樹に『プライド』を歌わせるなんて布袋寅泰は凄い男だ。」と言ってたのを思い出しました。
確かにそう聞くと、相手に「あなたへの愛こそが、私の〜プライド〜♪」と歌わせるなんてエグいな。と当時は思っていましたが…。
創作物は絶対的にフィクションなのだ。
私小説だって書かれた時点でフィクションだし。
ドキュメンタリーだって編集された時点でフィクションなのだ。
リアルに感じさせるのがプロの腕前。
観客は、つい現実の関係性を引きずって見てしまいがちだけど、そんなことは最初から計算の上でしょう。
もちろん、それに応える今井美樹もキム・ミニも凄い。
そもそも映画なんて実態の無い幻なのに、観客は虚構の中に垣間見えるリアルを探す習性がありますよね。
そこを上手く突かれました。
ほんと面白いわ〜。
knockさん、コメントありがとうございます。
『逃げた女』はかつて自分が閉ざしてしまった可能性を見て回っているようで…新しい人生を歩み始めるラストが大好きです。
『あなたの顔の前に』はレビュー書いてますので、良かったら^ ^