遺灰は語るのレビュー・感想・評価
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90歳を超えた名匠による無二の語り口
共に映画を作り続けた兄ヴィットリオを喪い、自身も90歳を超え、もうパオロ・タヴィアーニの新作を拝める機会なんてないのでは・・・と感じていたが、本作と出会えたことを嬉しく思う。とはいえ、この物語は不思議な語り口で「過ぎゆく時」をゆっくりと紡ぐ。それに、主人公ともいうべきノーベル賞作家はあっという間に死を迎えて遺灰と化し、しかし埋葬に関する遺言はなかなか叶えてもらえず、戦後になってようやく念願の故郷シチリアへ向かうことに・・・。モノクロームがもたらすノスタルジックな色合いと、時折ビュウと吹き付ける潮風ががなんとも言えない心地よさをもたらす。誰かを糾弾するわけでも、高らかにメッセージが発せられるわけでもない。葬礼中も子供同士の屈託のない会話でクスッと微笑みが伝染し合うような、柔らかさが優しい。頭をよぎるのは「ヴィットリオに捧ぐ」の文字。弟から兄へ。彼なりの追悼の想いがこもった映画のように思えた。
遺灰が主人公‼️
ノーベル賞受賞の文豪ピランデッロの遺灰を、戦後に故郷シチリアに戻してあげるお話‼️冒頭の真っ白な部屋でのピランデッロの独白による臨終のシーンは、子供たちが老いるイメージも含めて「2001年宇宙の旅」のボーマン船長のシーンを思い出しました‼️そしてイタリアの戦乱が当時のニュースフィルムを交えて紹介されるシーンは、その生々しさに戦慄させられます‼️そして遺灰はシチリアへの旅へ‼️遺灰と一緒はイヤだと乗客に拒否られる飛行機、遺灰の入った木箱をトランプの遊び台にされる列車、そして子供用しかない棺、その棺の葬列を見て「小人の葬式だ」と笑う人々‼️戦争を生き残って、帰ってくる人々と同じように、遺灰(ピランデッロ)も苦難の中帰ってくる‼️その道中をまるでピランデッロ自身が微笑ましく紹介してくれてるように感じました‼️特に列車でのエピソードでは、ピアノの演奏者による演奏に合わせて、過去のイタリア映画の名作の映像が挿入されていたり、特に印象的なのは、イタリア人男性とイタリア語が話せないドイツ人女性のカップルのエピソードで、そのモノクロ映画の美しさと相まって、忘れられないエピソードです‼️そして遺灰の一部がシチリアの海に撒かれ、ピランデッロが本望を遂げた瞬間、それまでのモノクロの画面が鮮やかなカラーに変わる‼️美しい空、青い海‼️ホントに素晴らしいです‼️そしてピランデッロが遺作として描いた短編「釘」が映像として紹介される‼️シチリアの少年が父と共にレストランを開業、大繁盛する。ある日、外で喧嘩してる二人の女の子を止めようとして、手に持っていた釘が一人の女の子に刺さってしまい、女の子は死んでしまう。少年の時も、青年になってからも、老人になっても女の子の墓参りを欠かさない主人公に涙が溢れてきました‼️人生とは何なのか⁉️いつ襲ってくるかわからない死の恐怖‼️生を与えられた者はいかに日々を過ごすか⁉️なんか監督からのエールというか、応援歌のようなメッセージを感じました‼️さすがパオロ・タビアーニ監督‼️これまではお兄さんと一緒にタビアーニ兄弟としてクレジットされてきましたが、一人でも優れた映像作家であることを証明してくれました‼️
主役は遺灰!?
内容はノーベル文学賞作家ルイジ・ピランデッロ氏の死後、遺言通りに故郷のシチリアにある固い岩の中に自らの遺灰を埋葬し、一部は海にまいて欲しいというものだが、亡くなられた1936年当時はファシズムの勢いが強く、文豪として人々からも慕わられていたピランデッロ氏の名誉を独裁者ムッソリーニが政治利用するために密葬しひっそりとローマの霊園で10年間埋葬されるのだが、ファシスト党が潰れイタリアは敗戦国になり、アメリカの統治下におかれてからのピランデッロ氏の遺灰をシチリアへ移動させるという一大プロジェクトだが、行く先々でとんだハプニングに見舞われながらも最後は遺言の内容をしっかり実現したところでエンディング。
ピランデッロ氏の遺作となった短編の釘も話の展開が独創的過ぎてなかなか面白かった。
最初はどうしたんだ?おかしいと思ったシーンからはじまり、エンドへの流れから実はこういうことがあり今に至るというのが後々になって説明されていくのだが、話の展開の仕方がユニークだったのと主人公の少年が抱える心の闇にも丁寧に描写されているのが印象的だった。
映像作家としてのタビアーニ監督の、卓越した映像感覚と語り口を十二分に堪能できる一作
イタリアを代表する映画監督であるタビアーニ兄弟の、弟パオロ・タビアーノが兄ビットリオの死後(2018年死去)、単独で監督した長編作品です。 本作の「主人公」は、実在するイタリアの作家、ルイジ・ピランデッロですが、物語は彼が亡くなるところから始まります。その彼の独白がしばらく物語を引っ張っていくため、「遺灰は語る」という題名は、抽象表現や比喩などではなく、物語そのものをずばりと言い表していることが分かります。 冒頭で見せる、ちょっと『2001年宇宙の旅』(1968)に通じるようなシンプルかつ抽象的な現代アートのような構図と、時間感覚を飛び越えるような不思議な演出は、一瞬で忘れがたい印象を残します。 そこからピランデッロの遺灰が辿る数奇な運命を描いた本編は、一転してユーモアと皮肉を加味した極めて写実的な描写となっています。 上映時間約90分と、近年の映画作品の中では比較的コンパクトですが、モノクロームの美しさを最大限に引き出しつつ、変幻自在の語り口で様々な人間ドラマを見せるという密度の濃さは、短さや物足りなさを全く感じさせません。 イタリア映画の巨匠作品と身構える必要は全くない作品なので、本作をタビアーニ作品の入り口とすることも全く問題ないと思います!
映画館に行って損した気分になる映画
シニカルなコメディにしたかったのかもだが、ぬるくて笑うところに到達しない。 余った灰を海に向かって散骨したところからピランデッロの短編「釘」の映像化作品になるので、訳分からんエピローグと思ったら、「併映」なのか。 ノーベル賞作家が死の直前に書いた短編とのことでなんか意味があるんだろうが本人にしか分からないたぐいのものでしょう。 毎年墓参りしているのが加害少年だったら、「on purpose」は彼が毎年そこに来ざるを得ない目的のための殺害?? よっぽどのファンでない限り、作家の頭の中を理解したい欲求は湧かないと思います。
何を観客に見せたいのだろう?
1934年にノーベル文学賞を受賞したイタリアの文豪ルイジ・ピランデッロは自分の遺灰を故郷シチリアへ帰すよう遺言を残したが、当時の独裁者ムッソリーニは彼の名声を利用するため遺灰をローマに留めていた。戦後、ピランデッロの遺灰はようやくシチリアへ帰還することになり、シチリア島特使がその重要な役目を命じられたが、次々とトラブルが発生し・・・てな話。 確かに多少のトラブルは有ったが、死んで10年経って遺灰を故郷に戻したというだけの話に特に興味も湧かなかった。 突然モノクロからカラーになり、ピランデッロの遺作「釘」を映像化した短編が流れたが、少女を釘で刺し殺した?意味が分からなかった。 これも訳のわからない文学風の作品に感じ、自分には理解できなかった。
理解不能💥
ノーベル文学賞を受賞したピランデッロ📖´-
彼の遺灰について、政治や宗教やらが複雑に絡み
振り回される滑稽な人達…。
コミカルでシニカルで笑いを誘ってるのだろうけど
イタリアンジョーク?は私にはわからない🤣
ラスト、ピランデッロの短編「釘」の映像化が
流れるけれどこれまた意味がわからん。
本編との繋がりとかあったのか🤔
とても難しい作品としか言いようがございません💦
寝なかっただけ褒めて欲しいです🤣←
予習必須。
イタリアのノーベル文学賞受賞作家の遺灰を彼の故郷シチリアに持ち帰る道中の話。 彼の作品は読んだこと無いがバリバリのファシストだったと聞く。 旅自体ポンコツでしょうもないエピソードの羅列に感じるが、確かに葬式ってこんな感じである。親戚の子供は騒ぐし、遺灰になってるから小さくて今ひとつ荘厳な感じも伝わらない。亡くなってから何年も経ってるし、、、彼の作品読んでれば思う事あるのかも知れないけど、じわじわ故郷に戻れて良かったね、と思うだけであった。 併映されている彼が死の直前に書いた作品「釘」はかなり暗示的な作品なんだと思うが、何が何やらわからなかったよ、予習してなくてすいません。 民族同士の対立とか宗教的な対立なのか?マジで喧嘩してる女の子はそんな風に見えた。 よくわからんけど。
このセンス、好き。
『遺灰は語る』の方は、 冒頭がオシャレでカッコ良くて、 「わぁ~!!ステキ!」ってなりました。 エピローグの『釘』は、ちょっと難しかったです… でも、両方とも、なんだかスゴくカッコ良い。と思いました。 それも狙ってる感がなくって、さらっとカッコいいの。 とにかく、カッコいいの。
え?エンターテインメント?
え?エンターテインメント? 予告編を観て、 遺灰をめぐって、 哀しくて、 滑稽な語り口、 これってエンタメ? ビットリオの呪縛が解けた? とはいえ、 エンタメは、 やる訳はないだろうとこわごわ、、、。 『グッドモーニング・バビロン!』は壮大なセットや兄弟のストーリーでなんとか最後まで観れたがテンポは良くなかった。 『パドレ・パドローネ』は、 生まれ育ち灰になる場所の崇高さ、 厳かさを静かに強く描いていた。 パオロの意思が色濃く出ていた。 本作は兄をリスペクトのテロップは出ていた。 ダヴィアーニ兄弟は、 ネオリアリズモの影響は、 もちろん0では無いのだろうが、 「インターナショナル」を流すという事は推して知るべしか。
画の美しさ、群を抜いている
ノーベル賞作家であるピランデッロの遺灰をシチリアまで運ぶ、というテーマ。イタリア映画祭の作品で唯一のモノクロのビジュアルに惹かれて気になっていた。 散骨のシーンになって、そこまでのモノクロの世界からカラーが一気に広がる演出は見事だった。最初から美しい鮮やかな世界を見せられるより、よほど印象深く青を際立たせる。全編通して構図がとにかく美しく、視覚的な満足度は抜群。 この作品はイタリアという国に対する文化的知識とか、そういった下地がないと良さが堪能できない気がする。すみませんもう少し勉強します。 それにしても、最後の短編はなんだったのだろう…あれだけはいまだによくわかりません…。
ほどよくコメディタッチで観やすい。
映画館スルーしようか迷ったけど、シチリア島が出てくるって事で、映画館ゴーしてきました(笑) 最近『胸騒ぎのシチリア』観てから、シチリア島に興味津々です。 なんか、こむずかしそうな…眠そうな…イメージだったけど、そんな事ない、 ほどよくコメディのタッチで、テンポよくサクサク進み、観やすかった。 面白かった♪ この監督の映画は観た事なかったけど、巨匠だって事を知ってから観たので、 さすが巨匠、いろいろセンスいいなー♪ と感心しつつ、クスっと笑いつつ、楽しく観ました(笑) 90分というコンパクトな尺にも巨匠のセンスを感じました。 一応、くわしい事は伏せておきますが、モノクロだけでなくカラーパートもあります♪ もう1回観たい♪
実話?
ルイジ・ピランデッロさんって実在の人物だったんですね、搭乗拒否されたり、カードゲームの台に使われたり、小人の葬式と笑われたり、バチあたりな連中に苦笑。でも無事シチリアに帰還。これも実話なのかな。 短編「釘」も良かった。
パオロ自身の遺言ともとれる美しい映像詩
思えば1977年のパルムドール作『父 パードレ・パドローネ』が日本で公開された1982年に出会ったタヴィアーニ兄弟。ベルトルッチ、トルナトーレなどとともにフェリーニ亡き後のイタリアを代表する映画監督と言って良いかと。 知らんかったけど、お兄さんのヴィットリオが2018年に亡くなられたということで、これが弟さんパオロの初単独監督作になるのですね。 1934年にノーベル賞授賞式からスタートするドキュメンタリーなイントロ。戦前、戦中、戦後のイタリアの空気を駆け足で伝えた。 34年にノーベル文学賞を受賞し、36年に亡くなった文豪ルイジ・ピランデッロ。彼の遺灰が遺言に従ってローマから故郷シチリアへ運ばれるまでの旅が、美しいモノクロ映像に鮮烈なカラー映像を織り交ぜて描かれた。 ユーモラスで、シニカル。何より美しい映像詩として結実した。いい気分に浸った。 ある意味、遺言とも取れる今作が最後の作品にならないことを祈って🙏
タヴィアーニ監督の老いも感じる
「カオス」は私のイタリア好きを決定づけた作品で、何度も見たし、アグリジェント郊外にあるピランデッロの家や墓も見に行った。この映画もピランデッロ作品にあるモヤモヤ感を本人に当てているが、短編「釘」の追加も、よく意図は分からない。ピランデッロとファシストや教会との微妙な関係はよく描かれている。ただ、こんなものはすぐに結論を出さなくていいし、答のない問はみなで色々考えればよい。ただ、兄を失った監督の老いや寂しさも感じて、心から楽しむまでにはいかなかった。
世界は私を理解しない。
2022年。パオロ・タビアーニ監督。イタリア出身のノーベル賞作家は亡くなる間際、葬儀は故郷シチリアで質素に、遺灰は海へ、と言い残したが、政府の意向で遺灰はローマにとどめ置かれてしまう。戦後になって遺灰は故郷に戻されることになるが、、、という話。 ところが移動過程でのエピソードが示すのは、庶民レベルでは「ノーベル賞はすごい」という表面的な権威が意識されるだけで、作家本人への敬意などないし、まして運ばれる遺灰はただ不吉なものでしかないということ。遺志は国家にだけでなく社会全体によって曲げられるのだ。遺灰は故郷に戻ってもモニュメントのなかに入れられてしまう。たまたま余った一部の遺灰だけが海にまかれるのだが、その時、画面はモノクロからカラーへと変わり、大海原のうねりが生命の根源を感じさせる。ほんの一部だけにせよ解放感がある。 その後、作家の遺作が映像化される。その物語では衝動的に少女を殺害してしまった少年の姿が描かれている。荒々しい世界の姿、自らを襲う衝動、周囲に理解を求められない孤立、が息苦しく描かれている。そうして映画を観ていた者は「世界は私を理解しない」ことについての映画を見たんだな、ということを深く了解する。
遺灰は語る。とある死生観について
昨今珍しい?文学映画かと。
表現としてシュールさ、滑稽さはあれど、いわゆる現代映画の味付けのそれではなくて、例えば漱石作品を読んだ時にあるような、現代と照らし合わせると「フッ」とする程度のそれだったりする感じですかね。「釘」の奇妙さは芥川のような、、?
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監督曰く、釘は原作者であるピランデッロの死の20日前の作品とのこと。
遺作が「釘」で、「遺灰は語る(さらばレオノーラ)」が死後のフィクションだから、上映とは逆順で観たならもう少し分かりやすいのかなあと思った。
purposeを「定め」なんてヒネった字幕付けるから余計に分かりにくい感じもしましたけど、少女の死を「悼む」ことが人生の目的(purpose)として描く「釘」は、ピランデッロの人生観が何かを悼むことであり、それが今回の監督としてはお兄さんの死により触発され映画化され、結局のところ美しい海に、世界そのものに溶け消えていくことが「目的(purpose・定め)」なのではないか。
っていうことを、描きたかった映画なのかなって思います。
死生観なんて人それぞれだから否定するもんでもないかな。
ここに描かれているのは「とある」死生観か。
壺の珍道中やら少女の喧嘩に示唆的な意味は無いのではないかとおもう。日本文学でも意味の無いサブストーリーってしばしばあったりするし。
列車内で目覚めに奏でられるピアノは、とてもとても美しく、劇中で唯一現代的なアプローチと感じました。
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