「因果応報の無限連鎖」きさらぎ駅 因果さんの映画レビュー(感想・評価)
因果応報の無限連鎖
凡百の駄作とは一線を画すメタ・ホラー映画という評を聞きつけ視聴。演出は最低最悪の部類だったが物語構成にはけっこう粋が凝らされていた。
『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』から『REC』『パラノーマル・アクティビティ』『女神の継承』に至るまで、ドキュメンタルな臨場感を生み出す手法としてPOV撮影は常に一定の価値と実績を有してきた。ただ本作の場合、遠巻きの三人称撮影ではあまりにも陳腐化してしまう画面をなんとか取り繕うべくPOV撮影に逃げているきらいがあまりにも強かった。恐怖に先んじて撮影現場の予算問題的な哀愁が画面全体に漂っており、そういうホラーはいらねんだよ…と思った。
とはいえ物語の構成は面白い。強引に形容するならば「強くてニューゲーム」的な擬似タイムスリップ物語が『カメラを止めるな!』の文法で立ち上げられている、という感じ。
主人公(大学生の女)が「きさらぎ駅」被害者女性からの伝聞をもとに、次々と巻き起こる怪現象をのらりくらりと回避していくさまは見ていて清々しい。ただ、主人公のあまりにも無機的すぎる攻略作業には知の傲慢とでもいうべき倫理的な引っかかりがある。しかも主人公は連れ添った女子高生を最終的に裏切り、自分だけが助かる道を選択しようとする。
とはいえ本作はホラー映画なんだしこういうのは普通にスルーなんだろうなと思いきや、最後の最後で主人公に罰が下る。そして主人公はただ一人助かった女子高生の代わりに「きさらぎ駅」の無間地獄へと幽閉される。てかジョジョ4部のスーパーフライと同じシステムなんだ…きさらぎ駅って…
しかし映画これで終わらない。今度は被害者女性の姪っ子たちがふざけ半分できさらぎ駅に行こうとする。もちろんその軽率な好奇心の先に待っているのは死よりもむごい恐怖の永久反復に他ならない。思えば主人公も「変な卒論が書きたい」という軽はずみな動機からこのような事件に巻き込まれてしまったのだった。やっぱ面白半分で異世界に行く方法とか試しちゃダメですよね、でもやっちゃうんすよね、という人間の根本的因業性を示すところで本作は幕を閉じる。
都市伝説が題材=クソ映画という先入観を逆手に取ったけっこう面白い物語構成の作品だった。ただまあやっぱり演出は最低最悪で、後半部で前半部と呼応する箇所にさしかかるたびに当該シーンがいちいちフラッシュバックする演出などはしつこすぎて胃がもたれそうだった。いくら何でも観客の知性と想像力を甘く見積りすぎなのではないか、もっと辛口に徹すればより面白い作品になったんじゃないかとつくづく思う。