「地上のトップガンだ!」ALIVEHOON アライブフーン おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
地上のトップガンだ!
予告の迫力ある映像にひかれて鑑賞してきましたが、本編はさらにさらにすごかったです!手に汗握るシーンの連続で、心の中で何度も「マジか!」と叫んでしまいました。大スクリーンに映し出されるリアルな映像が、観る者の心をつかむ良作です。
ストーリーは、ドライバー不在で存続の危機に立たされたドリフトチーム・ALIVEからスカウトを受けた、eスポーツ界で日本一のレーサー・大羽紘一が、リアルレースでも才能を開花させ、チームと一丸となってドリフト界の頂点を目指すというもの。ストーリーはいたってシンプルで、序盤でその後の展開は予想がつき、ほぼその通りに進みます。大きな捻りや手の込んだ伏線など存在しません。でも、それでいい、それがいいのです。おかげで、内向的で人付き合いが苦手でゲームに居場所を求めていた紘一が、仲間との絆を感じて変容していく姿が、ストレートに伝わってきました。その一方で、「ゲームに居場所を求めて何が悪いんだ」というメッセージも込められていて、古い大人の価値観に縛られない若者の多様な生き方に理解を示すシーンも、地味に心に残りました。
しかし、なんと言っても本作の最大の魅力は、本物でしか味わえない圧倒的なドリフトシーンです。ドリキン・土屋圭市さん監修&出演により、リアルにこだわったCG無用のド迫力映像が、観客の度肝を抜きます。本物へのこだわりと迫力という点では、本作は「地上のトップガン」と言ってもいいくらいです。これを、車載カメラ、ドローン、路上視点、ドライバー視点等、巧みなカメラワークで魅せ、ドライバーの挙動やゲーム画面とのシンクロ等を絡ませて、ドリフトレースの魅力を存分に伝えています。
そんな実車のリアルドリフトに、埠頭の特設コース、最終試験の峠道、チャレンジカップ、ドリフェスと、さまざまな見せ場が用意されています。公道走行可能なチェイサーとシルビアでの埠頭バトル、フルチューンされたシルビアやスープラでのサーキットバトルももちろん大興奮なのですが、最も衝撃だったのは予測不能な連続コーナーを攻め続ける峠道です。撮影とはいえ、残雪のある時期に安全対策の施されていない一般道を攻めるなんて、冷や汗をかきながら興奮で体が震えました。
欲を言えば、人物像をもう少し深く掘り下げたり、チューンの妙味を描いたりすれば、物語をさらに厚くできたような気もします。しかし、ドリフトレースの魅力をシンプルかつストレートに伝えるには、これが最適解だったような気もします。本作を通じて、ドリフトレースとeスポーツにしっかり脚光が当たったのではないかと思います。
主演は野村周平くんで、口数少なく、それでいて真摯にレースに向き合っていく紘一にぴったりのキャスティングでした。堂に入ったレースシーンもすばらしかったです。ヒロイン夏実は吉川愛さんで、ドリフトレースへの熱い思いが伝わる好演でした。彼女は運転免許を持っていないのに、ハンドルを握る姿や運転中の目線が凛々しくて素敵でした。脇を固める陣内孝則さん、本田博太郎さん、モロ師岡さんらも、ベテランらしい演技で本作を支えています。