劇場公開日 2022年12月16日

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「●各映画誌で2022年の邦画No.1を次々と受賞するので観に行って...」ケイコ 目を澄ませて Minoruさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0●各映画誌で2022年の邦画No.1を次々と受賞するので観に行って...

2023年2月8日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

●各映画誌で2022年の邦画No.1を次々と受賞するので観に行ってみた。一言で評すると「岸井ゆきのが凄まじい作品」。収録3ヶ月前からのボクシングのトレーニングと身体作りに励みながら、一方で本作の主題である聴覚障害者としての日常生活も見事に演じきる。タイトルの「目」の力だって吸い寄せられそうなほど。とにかく彼女が素晴らしかった。
●聴覚障害を題材としたドラマや映画が流行する中でも、その普段の生活における細かな不便をリアルに描写し続ける。コロナ禍で口をふさぐマスク越しの会話は認知が困難など、ハッとさせられるような場面の一つ一つに納得させられ、都度に無意識にうなづいてしまう。
●悪く言えば地味だが、無駄な騒々しさは一切なく、鑑賞の満足感も十分得られる。下手なヒーローものや、感動と涙を無理に押し付ける作品よりも、よほど観る価値があると思う。あれこれ考えずにゆっくりと過ごしたいときなどにうってつけの作品。

▲一方でやっぱり地味。山場が限定的な抑揚のないストーリーと演出で、平坦な展開のまま100分の上映が終わる。客に楽しんでもらおうという姿勢はあまり感じ取れない。監督のインタビューも複数読んだところ、とても人が良さそうで真摯に映画製作へ取り組んでいる様子が伺えるが、こだわりが強すぎて肝心の観客は置いてきぼりの印象なのが残念。
▲「むしろ退屈が心地よい」という評論も苦しい言い訳で、人によっては退屈極まりないかも。事実、ふたつ隣りのご婦人は途中から寝息を立てていた。
▲16mmフィルムで映した表現自体は批評しないが、あえて大スクリーンで観るほどの映像だっただろうか。期待していた「optimal design sound system」という音響も良さがわからず。映画館よりもむしろ、週末の家のテレビで静かにゆっくりと楽しむ鑑賞スタイルの方がふさわしいのでは。

Minoru