「ひとつのフレームに託した奇跡ーー分断とパンデミック」ソングバード エライさんの映画レビュー(感想・評価)
ひとつのフレームに託した奇跡ーー分断とパンデミック
パンデミックによる厳しい制約の中で撮影を完遂した本作は、「破壊王」の異名を持つマイケル・ベイがプロデュースを務め、わずか17日間という驚異的なスピードで撮影されました。
iPhoneやGoPro、さらには監視カメラを多用したことで出力されたモニター映像のようなライブ感がある。
しかし、この映画が真に価値があるのは、ほとんどのシーンで登場人物が別々のフレームに映し出される中、クライマックスに訪れる“男女がひとつのフレームに収まる瞬間”です。私たちが映画というメディアに期待する「映画の力」を体現しているのです。あの時代に「ひとつのフレーム」を撮ることがどれほど困難であったかを、私たちは絶対に忘れるべきではありません!!
確かに、展開は陳腐で、かつ派手さを期待する人には物足りないかもしれませんが、現実の非常事態宣言下の中で描いたのは、同じ空気を吸うこともなく、触れることもなく、ただ愛を信じる人物たちの姿。この愛はフィクションではありません。むしろ、この映画が語るのは、コロナ渦とトランプ政権下での、分断の時代において人間が繋がろうとした希望だったのです。
『ソングバード』は、10年、20年後の未来に生きる子どもたちに、あの時代を生きた私たちが何を感じ、何を選び取ったかを伝える貴重な記録だ。
レビューの多くが批判的なのが多いが、その多くがパンデミック以前の「当たり前に映画が作られていた」時代の映画の見方を前提にしているのが多い。しかし、映画を撮ることが不可能だった時代に、見えないウィルスや制約と闘った製作者を賞賛したい。後年にカルト映画として評価されることを願う。
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